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失意のカイル・ラウリー「この1年は全くの無駄だった」

ラプターズはキャバリアーズ相手に4連敗を喫してシーズンを終えた。プレーオフでキャブズに敗れるのは3年連続、しかも2年連続のスウィープ負けで、あっけなくシーズンが終わった。

『天敵』との対戦ではあったが、このカンファレンスを勝ち抜こうと思ったらキャブズは避けては通れない相手。ラプターズは1年をかけてその準備をしてきたはずだった。レギュラーシーズンは東カンファレンスを圧倒する59勝を挙げての1位フィニッシュ。アップダウンを繰り返し50勝に到達するのがやっとだったキャブズとは大きな差があったはずだ。さらには、1回戦でペイサーズにGame7まで持ち込まれる大苦戦をしたキャブズの状態は決して良くはなかった。そのキャブズにスウィープ負けを喫したのだから失意は大きい。

敗退が決まった直後の会見で、カイル・ラウリーは肩を落としてこう語っている。「今回こそNBAファイナルに行けると信じていた。3年連続でファイナルに進んでいるキャブズを乗り越えるため、ベストのチームを作ったはずだった。だけどこういう結果になって、この1年は全くの無駄だったと感じているよ」

キャブズを乗り越えることは、「レブロン・ジェームズを乗り越える」ことと同じ意味を持つ。第3戦の決勝ブザービーターを見れば、レブロンの威光を感じずにはいられない。しかし、ラプターズの敗因はレブロンを意識しすぎて、本来やるべきことにフォーカスできなかったことだ。

キャブズとのシリーズを通して、ラプターズは1年間積み上げたものを放り出してキャブズにぶつかっていった。スターターを入れ替え、ローテーションも崩し、結果的に自滅した。もう一つの敗因は、レブロンではなくキャブズのサポートキャストを勢いに乗せてしまったことだ。レブロンを警戒するあまり、他の選手へのケアが足りなくなった。その隙を突いて活躍したのがジョージ・ヒルであり、ケビン・ラブやJR・スミスも自信満々で攻守に働いた。結果、レブロンは消耗せず。プレータイムこそ長かったが、ギアを上げるのは試合の重要な局面だけ。あとはコート上でラプターズの選手たちを威圧していれば十分だった。

思えば1回戦のペイサーズはその逆をやってキャブズを追い詰めた。レブロンはランス・スティーブンソンがあの手この手で止めようとしたが、それで止められないとしても自分たちのゲームプランを崩さず、しぶとく勝ちを拾っていった。ラプターズはレブロン以外の選手にやられてしまい、勝負どころで本気のレブロンに蹂躙された。

終わってみればキャブズが強かったということで、レブロンがいかに偉大なプレーヤーかをあらためて印象付けるシーズンになったが、ラプターズはこのシリーズに挑むメンタルの持ちようを間違えたことで、まさに「1年を無駄に」したことになる。

ラウリーは「僕らは若いチームだし、これからも成長を続けていく。もっと強くなるために、夏の間も努力をしていくよ」と言う。ただし、クラブ会長のマサイ・ウジリはドウェイン・ケイシーをヘッドコーチの職から解くことになるだろう。そして、この夏にはチームに大幅な刷新が行われるはず。ベストを尽くしたはずがスウィープ負け。超えるべき相手の大きさをあらためて痛感させられた今、ラプターズの再起の一歩は、どのような方向に踏み出されるのだろうか。