レブロン・ジェームズ

名将ポポビッチの称賛「ファンタスティックな仕事」

レギュラーシーズンの全日程が終了し、5チーム(ウィザーズ、サンズ、スパーズ、キングス、ペリカンズ)がシーズン再開の舞台となった『バブル』を離れた。

『USA TODAY』は、キングスの指揮官ルーク・ウォルトンが、最後の試合を終えたロッカールームで選手たちにこんな声を掛けたと報じている。「ここを離れてもスマートに行動しよう。新型コロナウイルスの感染はまだどの地域でも収束していない。これからも一人ひとりが安全を心掛けるんだ。これから家に帰るが、自分たちに責任があることを忘れないでほしい」

これに対してバディ・ヒールドは「分かった、オレのケツはステイホームしておくよ」と答えたそうだ。

NBAがオーランドのディズニーリゾート内に設置した隔離エリア、通称『バブル』はここまで完璧に機能している。シーズン再開に参加した各チームは、オーランドに向けて出発する前にPCR検査を実施。ここで351人の選手のうち25人、884人のスタッフのうち10人に陽性反応が出た。『バブル』に到着した最初の検疫期間には、322人の選手のうち2人に陽性反応が出ている。

ホテルの狭い一室に閉じ込められる生活は、ストイックにバスケに打ち込む代わりにオフコートでは豪華な生活を送る選手たちには不評で、当初はSNSに不満の投稿が溢れた。スパーズのグレッグ・ポポビッチは「仕組みを説明された時には、不確定要素が多すぎて上手く行くわけがないと考えた」と振り返るが、「リーグは物流、安全対策、我々に課すルールを完璧に整えた。すべてが信じられないほど機能した」と『バブル』を称えている。

チームの到着から約5週間、ここまで『バブル』の隔離エリア内で新型コロナウイルスは確認されていない。

スパーズはプレーオフ連続出場記録が22シーズンでストップしたが、ポポビッチはこのことを問われると「もう過去のこと。私はいつだって未来を考えたい」と答えている。その代わりに彼は、バスケットボールがある日常を取り戻したリーグの努力がいかに素晴らしいかを語った。

「バブルは彼らの手によるファンタスティックな仕事だ。このまま最後までこの状態を保つのが大事だが、こうやって試合ができるのは当たり前のことじゃない。規律正しく行動した選手たちもまた、称賛されるに値する」

スパーズのデマー・デローザンもまた、指揮官と同様に未来を考えている。この会見を終えたら家に帰る、というタイミングでデローザンは「家族と離れていたから、その分を少し取り戻さないと。マスクをして、安全に気を付けながらね」と語ったが、その『少し』とは我々が予想するよりずっと少ない。「3日か4日は充電のために休ませてもらうよ。そしたら来シーズンに向けた準備をスタートさせる。幸い、そのために必要な準備はリーグがすべてまとめてくれたからね」

デローザンのやり方は極端すぎるかもしれない。ウィザーズでは八村塁が「ゆっくりしたい」と本音を漏らし、指揮官スコット・ブルックスは「みんなギリギリまで頑張ってくれた。最低でも数週間は休養にあてたい。それ以上が必要であれば与えよう」と語っている。

リーグは『バブル』を稼働させるための様々な条件をすべて整えたが、それ以外のことにも気を配っている。それがデローザンの言う「必要な準備」で、バブルに参加していないチームに対しては練習施設の使用ガイドラインが定められており、『バブル』を離れた選手たちがワークアウトをしたいと願えば、それに従って行動することになる。

「これから家に帰るが、自分たちに責任があることを忘れないでほしい」。このウォルトンの言葉を、キングスに限らずすべてのチームの選手たちが肝に銘じて『バブル』を去る。

世界中のスポーツが再開しつつあるが、どの競技団体も安全確保に頭を悩ませている。NBAは『バブル』実施に極端なまでの施策を準備し、ここまで完璧に機能させている。レギュラーシーズンが終わった今、彼らの挑戦も折り返し地点を過ぎた。これからシーズン終了までも『陽性ゼロ』をキープできるか。コート上での激闘と同じく、新型コロナウイルスに対するNBAの戦いも続く。