文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

確実なディフェンスリバウンドで完勝

昨日行われた川崎ブレイブサンダースvs栃木ブレックスのゲーム1は、終始主導権を握り続けた川崎が全クォーターで上回り、89-61の完勝を収めた。

これだけ一方的な展開となったのは、川崎が栃木の強みを消したことに尽きる。栃木はリーグ最強のオフェンスリバウンド力を誇り、必然的にセカンドチャンスポイントの得点も多い。だが昨日の試合ではオフェンスリバウンドで10-9、セカンドチャンスポイントで13-7と川崎が上回った。その結果に大きく寄与したのが鎌田裕也だ。

「栃木さんはリバウンドとルーズボールが強いので、そこをどれだけやらせないかを意識しました。たまたまじゃないですけどそれがうまくいき、簡単にリバウンドを取らせず、そこから自分たちの良い流れに持って行けたことがこの点差につながった」と鎌田は振り返った。

「たまたまじゃないですけど」と謙虚な姿勢を崩さないのが鎌田らしい。それでも「身長は相手のほうが大きいですし、相手のほうが上だと思ってますけど、気持ちでは負けないといつも思っています」と、静かなる闘志を内に秘めている。

バスケットボールは数字に表れない貢献度の高さが注目を浴びることが多々ある。昨日の鎌田はそれの典型的な例だ。鎌田のスタッツは決して突出したものではなく、リバウンドはわずか2。だがオフェンスリバウンドが強い相手に対し、自らがボールを保持できなくてもチップアウトで確実にマイボールにしていた。

「ボックスアウトはずっとしていました。自分が取れなくても周りがしっかり取ってくれるなら全然オッケーなので」と鎌田はスタッツに固執しない。

確実にリバウンドを取れる状況ではない場合、ボールを弾くシーンをよく見るが、それが相手に渡り結果的にノーマークのシュートシーンを誘発する場面はよくある。だが鎌田のそれはほぼ100%の確率でマイボールとなっていた。「外国籍選手とマッチアップすることも多いですし、簡単には取れないということで、みんなも共通意識として準備してくれてると思うんです」と鎌田はチームメートの準備を強調した。

竹内公輔がいる栃木のアドバンテージを打ち消す

鎌田が栃木の強みを消すことで勝利に貢献したのは間違いない。栃木では竹内公輔がオン・ザ・コート「1」の時間帯でチームにアドバンテージをもたらしている。だが竹内は「(オン・ザ・コート「1」の)2ピリ、3ピリで両方とも点数で負けています。自分が起点というか、リズムを生むような選手にならないといけないと思っていますが、今日はそれができなかった。鎌田選手はディフェンスを頑張っていて、僕はなかなかうまく攻められなかったと感じています」と鎌田に苦戦したことを認め、「悔しい」と漏らした。

川崎は長らく、オン・ザ・コート「1」の時間帯が弱点と言われてきた。大黒柱のニック・ファジーカス頼みになってしまい失速するパターンが多かった。だが昨日はファジーカスを起点にし、そこから鎌田が得点したことで、栃木ディフェンスは守りどころを見失った。

竹内を封じ、オフェンスでも貢献度が高かったが、あくまで謙虚な鎌田は「もっともっと上を目指さないといけないですし、自分がもっとできていたらチームはもっと楽になるかなと今日も感じました」と、むしろ反省の言葉を多く口にした。

「当たってくる分には全然問題ないです」

忘れてはいけないのが、その広い肩幅を生かしたスクリーナーとしての役割だ。ピック&ロールが主流の中でスクリーナーの良し悪しは勝敗に直結し、ムービングスクリーンでオフェンスファウルを取られるターンオーバーは最もチームの勢いを削いでしまう。

「かけられる側が一番嫌なタイミングやポジション」を常に意識していると鎌田は言う。さらに、スクリーンをかける側も消耗するが「当たってくる分には全然問題ないです」と鎌田は意に介さない。「むしろそれで相手にいろんなダメージが与えられたらいくらでもできますし、インサイドはもっと激しいのでそこは許容範囲内です」

総じて鎌田のパフォーマンスは良かったが、パスミスからワンマン速攻を許した場面もあり、正しい状況判断をさらに詰めていく、オフェンス面でのさらなる向上が求められる。「相手のディフェンスを見て、違う動きをしたらもっと簡単にボールが動くかなと感じた」と鎌田は言う。鎌田が攻守両面で存在感を見せれば、それだけ周りの味方へのプレッシャーも和らぐ。鎌田の成長は川崎の悲願達成に大きな役割を占める。