[引退インタビュー]引退表明の志村雄彦「選手としてのキャリアを終えてでもやる魅力がある」

2018/04/23
Bリーグ&国内
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取材=古後登志夫 構成=鈴木健一郎 写真=仙台89ERS

仙台89ERSの『シンボル』である志村雄彦が今シーズン限りでの現役引退を表明した。プレーオフ進出の可能性は断たれているため、5月5日のレギュラーシーズン最終戦を最後にプレーヤー人生に区切りを付けることになる。身長160cmとポイントガードとしても一際小さい志村だが、オールラウンドな能力を発揮し、地元のチームである仙台を長く引っ張ってきた。

多くの選手が毎年引退するが、悔いなくキャリアに幕を下ろす者は一握りしかいない。「毎年のようにプレーヤーであり続ける意味を考え、毎年が勝負と考えてプレーしてきました」と語る志村は、その数少ない存在の一人だ。引退の決断と第2のキャリアについて聞いた。

「話をもらった日にもう僕の中では決断していました」

──まずは現役引退を決めるまでの経緯について教えてください。

今年に入って、新しくチームの社長になる渡辺太郎さんから「一緒に強いチームを作ろう」という話をされたのがきっかけです。僕は選手としてやれることをいっぱいやってきましたが、フロントに入って強いチームをもう一度取り戻すという思いを聞いて、それがもう決定打でした。

その話をもらった日にもう僕の中では決断していました。この話を受け入れれば選手を辞めることになると理解していましたが、相手が尊敬する先輩であり、なおかつデービット・ホルトンさんがオーナーとしてバックアップしてくれて、僕の背中を後押ししてくれるメンバーと一緒にやれるということで、僕としては「これだな」という感じです。プレーヤーとして「本当に辞めちゃうのかな」という気持ちもありましたが、決断は早かったです。

仙台の社長になる渡辺さんは仙台高校の先輩です。東北楽天ゴールデンイーグルスの立ち上げメンバーであり、この数年でいろんな仕事で絡みましたが、人を引き付ける魅力があります。その先輩が「仙台を強くしないといけない」と立ち上がるわけですから、僕も選手キャリアを終えてでもやる魅力があると感じました。

──迷わず現役生活に区切りを付けられるぐらいなので、その魅力は相当ですね。

渡辺さんは高校時代からキャプテンをやっていて、人をまとめる能力のある人でした。楽天イーグルスでもいろんな仕事を自分から仕掛けていました。バスケットが好きなこともすごく感じるし、そこはすごく信頼できる人です。今はこの人と一緒に仕事ができるのが楽しみです。

またデービットさんは『HALEO』の社長で、これまで僕のことをすごく応援してくれ、オフシーズンになるとビジネスなどいろんな話をしてくれました。仙台で自分の力でビジネスを成功させた人ということで、尊敬しています。

「自分がやれることをどんどんやっていくつもり」

──引退会見では「トイレ掃除からやるつもり」という発言がありました。

チームを強くするためならいろんなことにチャレンジするつもりです。今の自分には社会人としての経験、ビジネスパーソンとしてのスキルがありません。トイレ掃除と言ったのは半分ユーモアですけど、そういうところから何でもやるという気持ちです。強いチームを作る上で、まず自分がやるべきことは営業周りなのかファンサービスなのか。これから新体制になった時、自分がやれることをどんどんやっていくつもりです。

僕がプロバスケ選手としてやってきた10年間、他の人たちは同じ10年でまた違う経験を積んでいるわけですから、僕は1年生からです。そういった意味で、イチからやり直しであることは間違いないです。もちろんバスケットについてプライドは持っているし、バスケットをやってきたことが評価されて声をかけてもらったのだと思いますが、学ぶべきことは多いと思います。

「辞めてもいいという思いで取り組んでいました」

──「仙台89ERSを強くする」という目標は、具体的にはどんなことですか?

まずはB1に上げることです。あとは強いだけじゃなく、地域から愛されるチームにしたい。強いことと愛されること、両方をかなえてこそスポーツ球団としての成功だと思います。仙台には楽天とベガルタがあって、学べるところはたくさんありますから。89ERSとして、もっともっと市民権を得て、仙台の文化になれるようにやっていきたいです。

──引退後の話ばかり聞いてしまって恐縮ですが、現役生活に悔いはないですか?

全く悔いはないです。それは、僕が毎日「もう辞めてもいい」って思うくらいプレーしていたので。それは別に冗談ではなくて、本気で辞めてもいいという思いで取り組んでいました。特にここ数シーズンはそういう思いが強かったので、全く後悔はしていないんです。

まあ、やり残したことはありますね。チームがB2に降格したままであること、そもそも選手として仙台に優勝カップを届けることができませんでした。それはフロントの一員として必ず成し遂げたいです。

──引退セレモニーが4月29日の試合で行われます。

挨拶するぐらいだと思いますが(笑)、何を言うかは全く考えていません。目の前の試合のこと、その日の練習を頑張ることしか考えていないので。28日と29日、そして5月2日は引退シリーズということで、是非とも僕のプレーを見ていただければと思います。今シーズンも全試合出場を目指して、良いプレーをお見せできるようにコンディションをしっかり上げていきます。

[引退インタビュー]仙台89ERSのシンボルとして引退する志村雄彦
「ここでキャリアを終えられることは幸せです」