文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

栃木ブレックスを上回ったボールへの執念

「戦う前からタフな状況ではあった」と多嶋朝飛が言うように、レバンガ北海道は先週末の栃木ブレックスとの直接対決を迎える段階で3ゲーム差と、チャンピオンシップ進出に黄色信号が灯っていた。それは1勝3敗と直接対決で負け越しているため、実質4ゲーム差だからだ。

「どちらにも流れが行かない中、リバウンドやルーズボールなど細かい積み重ねのところで負けてしまったゲームだった」と多嶋が振り返ったように、第1戦を接戦の末に落とし、北海道はさらに窮地に立たされた。

それでも迎えた第2戦、初戦と同様に最後まで拮抗した展開が続いたが、前日の課題を修正した北海道がシーソーゲームをモノにした。「今日も我慢比べでした。ルーズボールのところも含めリバウンドは修正できましたし、40分間みんなでできたことが結果としてつながったと思います」と多嶋は勝因を語った。

「フィフティーフィフティーの状況の中で、5人全員がルーズボールを取りに行く執念をしっかり見せることができた」と指揮官の水野宏太も多嶋と同様の思いを抱き、選手がコート上で見せた『戦う意志』を称賛した。

トラソリーニ依存を脱却「新たな色」

リバウンドやルーズボールへの意識では、栃木はリーグ屈指のチーム。泥臭いことをチーム一丸で遂行することで昨シーズンにチャンピオンとなった。そんな相手の強みを上回った末につかみ取った勝利は、単なる1勝以上の価値がある。

栃木を相手にこういうパフォーマンスができたことは自信にしていいと思います。みんながこうした意識を持てば、他のチーム相手にもできるということだと思うので。こういうレバンガのバスケを続けていけば、厳しい戦いでも勝機は見えてくる」と多嶋も自信を口にする。

また第2戦では、平均18.4得点(リーグ4位)でチームのリーディングスコアラーのマーク・トラソリーニが9得点に封じられた。トラソリーニが2桁得点に満たなかった過去4試合、北海道はすべて敗れている。多彩な得点能力を持つエースに少なからず依存するのは、どのチームにもあること。それでもこのシーズン終盤になり、北海道はトラソリーニを抑えられても勝ち切る力を見せた。

「ダニー(ダニエル・ミラー)がインサイドで身体を張って頑張ってくれたし、いろいろな選手が分散して攻撃できることも増えました。マークが抑えらえれた試合ではありますが、そういう時にチームがやりたいことの中でステップアップできて勝ちにつながったのは新たな色として良かったです」

「一戦必勝」の精神でチャンピオンシップへ

北海道は今週末、京都ハンナリーズと対戦する。初の顔合わせとなる京都は、すでにチャンピオンシップ出場を決定させている手強い相手。それでも多嶋は「ホームで戦えるので、レバンガらしいゲームをしてファンの皆さんの前で勝てるように準備したい」とホームアドバンテージを背に迎撃準備を整えている。

多嶋は栃木との第2戦の最終盤、残り1分13秒から得た8本のフリースローをすべて沈め、チームに勝利をもたらした。フリースローの成否によって勝敗が左右されることはよくあるが、多嶋はその重圧をはねのけた。

リーグのイケメン企画の常連であり、その柔和な表情が印象的な多嶋だが、コート上では一際プレッシャーのかかる勝負どころでも崩れない鋼のメンタルを見せる。逆転でのチャンピオンシップ出場へ、これからはただ貪欲に目の前の1勝を追い求めるしかない。頼れるキャプテンの挑戦は続く。

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