文=丸山素行 写真=野口岳彦

A東京から挙げた1勝が『自信回復』につながるか

今シーズンから激戦の東地区に編入されたサンロッカーズ渋谷。前半戦は10月末から10連勝を記録するなど大健闘。2017年を18勝10敗という好成績で終えたが、その後がいけない。天皇杯のシーズン中断後は6勝17敗と大きく負け越し、現在は東地区の最下位に沈んでいる。

そんなSR渋谷が前節、アルバルク東京との第2戦で久々となる会心のパフォーマンスを披露し、79-72で勝利した。勝利の立役者となったのはチームハイの26得点を挙げたロバート・サクレだ。サクレはここまで51試合すべてに出場(うち49試合で先発)、得点(16.7)とフィールドゴール成功率(49.3%)、プレータイム(26.4分)でチームトップとフル回転している。

「レフェリーの笛やプレーのスピードなど、Bリーグに順応してできている。昨シーズンから一緒にプレーしているメンバーもいて、お互いの仲が深まってさらにプレーしやすくなった」と、サクレは昨シーズンからスタッツが伸びている要因を語る。

ただ、後半戦の転落を食い止めることはできず、「フラストレーションは溜まっている」と正直な思いを吐露した。それでもSR渋谷は最終クォーターに猛追することがよくあり、チームの底力を信じるしかないとサクレは前を向く。

「第4クォーターでカムバックする力を俺たちは持っている。そういう選手たちとチームメートとして戦えることを誇りに思っているよ。負けが続いているが、燃えるような気持ちを出し続けてお互いを鼓舞して乗り越えていかないといけない。エナジーを持ってやっていきたい」

「チームのために働くことが自分の使命」

SR渋谷はリーグでもトップクラスのディフェンス力を誇り、ロースコアゲームに持ち込むことが必勝パターンだった。だが極度の得点力不足へと陥ったことでその方程式も崩れた。その中で第1戦でも26得点を挙げ、チームのリーディングスコアラーとなっているサクレの得点力はチームにとって欠かせない。それでもサクレはあくまでチームの一員であり、特別な存在ではないと主張した。

「チームのために働くことが自分の使命。チームを助けるために自分がいるのであって、自分がいないと勝てないとは思っていない。それぐらいチームを信じている」

サクレは『サクレダンス』と呼ばれる、ベンチでの大きなリアクションがNBAで注目を浴びていた。その陽気なキャラがアメリカで愛されていたが、それは日本でも変わらない。ただその周りを和ませる行動は、チームメイトのパフォーマンスを上げるためという意味合いも含まれているのだという。

「周りが緊張して張り詰めているのが見えたら、自分が率先して明るくふるまうようにしているよ。緊張をほぐして気持ちよくプレーしてもらいたいからね」

タフなリーグを戦うストレスは『読書』で解消

勝てないことによって生じるフラストレーションと、周りへの気遣いによるストレスは相当なものだろうと、勝手ながら心配になったが、そうしたストレス解消の方法を聞くと「読書」という答えが返ってきたのには正直驚いた。

「本を読んで気晴らししているよ。成功者の言葉とか、ポジティブになるようなもの。モチベーションを上げるような啓発本が多いかな」

後半戦の低迷についてヘッドコーチの勝久ジェフリーは「成功体験が少ないことで自信を失ってしまった」と分析していたが、A東京に勝利したことは自信回復につながるはず。SR渋谷のどの選手も「やっているバスケットは間違っていない」と口を揃える。自信を取り戻せば自ずと展開は変わってくるはず。攻守のキーマンとなっているサクレだが、チームのモチベーターとしても大いに期待したい。