文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

立ち上がりから全開「黙っていてもやるチームです」

土曜のゲーム1で千葉ジェッツに77-96の大敗を喫したシーホース三河だが、今日のゲーム2では完璧なバスケットを披露して102-84と快勝した。

立ち上がりから、三河の選手は前日の負けを取り戻すべく気合いに満ちていた。「昨日よりすべてのプレーが半歩速いぐらいに感じました」と石井講祐が振り返ったように、どのプレーにしても強度が高く、そして迷いがなかった。桜木ジェイアールのポストプレーから金丸晃輔が連続得点、さらにアイザック・バッツがシュートミスのリバウンドを自ら取って押し込み7-0。開始1分20秒で千葉はタイムアウトを取らざるを得なかった。

タイムアウト明けにギャビン・エドワーズが初得点を奪いランを止めた千葉だが、三河の勢いは止まらない。桜木がポストプレーから次々と決定機を作り出し、開始6分半で25-9と大量リードを奪った。

三河はスタート5人が揃ってエンジン全開。セカンドユニットも見事に流れを引き継いだ。「前日の大敗を受けて選手たちに檄を飛ばしたか」と質問された鈴木貴美一ヘッドコーチは「そこは黙っていてもウチはやるチームです」と答えている。「私が指示したのは『ここだけはやらせないように』というポイントだけです」

「起点にさせない」富樫対策で千葉の爆発力を封じる

そのポイントの一つが富樫勇樹への徹底した対策だった。指揮官は「起点にさせず、攻めさせた」と明かす。「富樫くんに自由にプッシュされるとファストブレイクが出るチームです。3ポイントシュートがシューター並みに入るしトランジションがうまい。今日は孤立させて、彼だけ攻めさせる形にしました。彼の運動能力やスコアの能力を考えれば1対1で抑えるのはまず無理なので、逆に孤立させる。他の選手がボールを触れなければ。点は取られたが、苦しい時に彼が全部やっているのはチームとしてOKにしていた」

守備では富樫に対して橋本竜馬がフェイスガードでコートのどこまでも追いかけ、またエドワーズにはバッツが付いて自由を与えない。第1クォーター終盤から3ポイントシュートが当たり始め、石井、富樫、富樫と3本連続で決めて追い上げる。それでもトランジションオフェンスを封じられたことで、千葉は本来の勢いを出せなかった。

48-37で迎えた後半も、三河のペースは変わらない。千葉はタフショット気味のシュートを粘り強く決めて食らい付くが、三河の得点ペースも落ちない。三河は比江島慎がボールの配給役に徹して無得点だった前半から一転、アーリーオフェンスで素早く仕掛ける攻めからフィールドゴール4本中4本成功の8得点と火が付いた。

残り2分半、ボールを奪った富樫が素早く攻めに転じて得意のファストブレイクに持ち込んだかに思われたが、食らい付いた橋本竜馬がスティールに成功。逆速攻に転じて松井啓十郎がシュートを決める会心のプレーで、橋本にガッツポーズが飛び出した。

プッシュしてのアーリーオフェンスが出た試合に

それでも千葉にも意地がある。ファストブレイクは封じられてもシュートタッチは総じて良かった。63-75で迎えた第4クォーター、富樫に固執せず小野龍猛やレオ・ライオンズがクリエイトするハイテンポな攻めが機能し、76-80と4点差まで迫るが、三河は追い上げを浴びながらも着実にファウルを誘発していた。

残り5分38秒、桜木がオフェンスリバウンド取ってのセカンドチャンス、ゴール下でパスを呼び込んだ比江島が小野のファウルを受けながら難しいシュートをねじ込んでバスケット・カウントをもぎ取る。「龍猛さんだけじゃなくてギャビンがいたので、必ずブロックに来ると。あわよくばと(個人ファウル4つだった)ギャビンのファウルを狙ったつもりでした。良い時間帯に重い点数が取れました」と比江島。プレッシャーのキツいゴール下でも迷わず勝負、「ペイント外で取ることは誰でもできるので、僕は極力ペイントの中でも取れるよう意識しています」と笑顔で振り返る会心のプレーだった。

比江島はたたみ掛けるようにアキ・チェンバースからファウルを誘発し、これで千葉はチームファウルが5つに到達。これで千葉はディフェンスの強度を落とさざるを得ず、反撃の勢いを失った。さらに残り2分、微妙な判定ではあったがエドワーズが得点した際にブロックに立っていた桜木を押し倒したとして個人5つ目のファウルで退場に。これが決定打となった。

堅守を誇る千葉が100失点を喫したのは今シーズン初。鈴木ヘッドコーチは「スタッツに出るきれいな速攻じゃなく、プッシュしてのアーリーオフェンス。我々がやろうとしていることが出た試合」と胸を張り、比江島は「これが僕らの本当の勝利パターンじゃないかと思います。自信になりました」と勝ち気なコメントをする会心の勝利だった。