文=丸山素行 写真=FIBA.com

エースの責任を引き受け猛反撃も、あと一歩及ばず

アジア選手権に臨んでいるU-16男子日本代表は昨日、ベスト4進出を懸けてフィリピンと対戦し70-72で惜敗を喫した。

日本は216cmのセンター、カイ・ソットに制空権を支配され、第4クォーター残り3分33秒で59-69と10点のビハインドを背負った。漂い始めた敗戦ムードを一掃したのが田中力だった。残り3分の場面から田中が2本連続で3ポイントシュートを沈めると、そこから日本は粘りのディフェンスを取り戻して失点を防いだ。

この勝負どころで、最年少の田中は明らかな『エースの自覚』を見せていた。アジリティを生かしたシンプルなピックプレーでズレを作ると、迷わずシュートを打っていく。すべてのポゼッションで決めていかなければ追い付けない状況、田中は責任を引き受けて仕掛けては得点を積み重ねていった。

残り1分20秒、田中がミドルシュートを沈め3点差に迫ると、残り32秒にはロングスリーを沈め、日本が土壇場で70-70と追いついた。フィリピンはたまらずタイムアウト。雄叫びをあげる田中をチームメートが取り囲み、最高の雰囲気になっていた。

「この負けもきっと意味があって負けた」

しかし、次のフィリピンの攻めを止められず、残り2.3秒で日本は2点のビハインドを背負う。タイムアウト明け、日本は田中に最後のオフェンスを託した。マークを引きはがして右の0度の位置でボールを受けた田中だが、ショットクロックぎりぎりで放ったフェイダウェイシュートがリングに嫌われ、70-72で試合終了のブザーが鳴った。

フィリピンに敗れたことで、日本はU-17ワールドカップの出場権を逃した。試合終了後にその場に突っ伏して泣き崩れた。それでもチームメートの河村勇輝、三谷桂司朗に励まされて起き上がった田中に、フィリピンの選手が次々とやって来ては肩を抱き、その健闘を称えた。

試合後、日本バスケットボール協会は田中の次のようなコメントを発表している。

「エースとしてこのチームを勝たせられなくて、本当に悔しいです。(八村)塁さんみたいにこのチームをワールドカップへ連れていけず、情けないという気持ちです。本当にみんなに申し訳ない気持ちがあります。いつもお母さんに何ごとにも意味があると言われているので、この負けもきっと意味があって負けたと思います。この負けを絶対に忘れずに、今後のキャリアにつなげなければいけないです。もし、また次に代表として試合に出られたら今度こそ絶対にエースになって、チームをワールドカップ優勝へと導けるような選手になりたいです」

史上最年少でA代表候補に名前を連ねた日本の逸材は、きっとこの敗戦を糧に飛躍していくだろう。伸びしろしかない15歳、今後の成長を見守っていきたい。