島田慎二

「アリーナのサイズだけでなく有効活用を」

──2026年構想でこれから軌道修正を考えていきたいものはありますか?

アリーナの考え方ですね。このコロナ禍においてアリーナのサイズアップをガンガン進めるのが是なのか、そこは再考すべきことかもしれません。リーグ運営にしても代表強化にしても一番難しいのはスケジュールを組むことで、市民体育館の使用から日程の調整もできない問題があります。サイズアップの前に、ある程度は自分たちでアリーナをコントロールしやすい状況を作るのが大事です。1万人とか2万人とか、大きければいいという考えを検討しなければならないと思います。

5000人のアリーナと1万人のアリーナがあって、2000円の単価で満員になったとして売上は1000万円と2000万円です。2倍と考えれば大きいですが、30試合で3億と考えると、チケット収益以外でも賄うことが検討できる数字です。アリーナのスケールに頼らない収益構造を作っていかなければいけない、まさにコロナ禍において考えていかねばならないと思います。

もちろん、1万人のアリーナがすべての試合で満員になれば良いですが、その状況をどこまで作れるか。コロナ禍においてはサイズアップとは別の価値観も追い求めるべきです。コンコースやラウンジなどの顧客体験の価値向上と高付加価値化、またこれまでの入場者数の価値と並行して、視聴者数も大事になってきます。

──アリーナに足を運んでくださる観客に加えて、視聴者も伸ばしていく。ここが一つのポイントになりそうですね。

リアルとバーチャルのハイブリット、そのあたりのテクノロジーは雨風の当たらないアリーナスポーツと親和性が高いので、バスケは当然その強みを生かすべきです。ずっとそう思ってはいたんですけど、そうせざるを得なくなりましたし、そうしないともたない状況になりました。今ソフトバンクさんは相当な投資をして視聴体験をブラッシュアップしてくださっています。そこには満員のアリーナの熱狂という絵面の魅力も大事なので、両方に価値が出てきますよね。

分かりやすい例で言うと、アジアの『テリフィック12』のような試合の視聴者数は、Bリーグの人気対戦カードの何桁も違うぐらいの視聴者数を集めます。公式戦ではなく親善大会だし、会場となるアリーナも決して大きくはないのですが、アジアでの視聴者数が文字通り桁違いで、そこにスポンサーが付くので大盤振る舞いができます。人口の規模も違うし国におけるバスケの地位も違うので一概には比較できませんが、それぐらい破壊力が違います。

日本はファンを集めたり地域で頑張ったり、企業努力ではトップクラスに頑張っていて、このモデル自体が他国に移植できるぐらいです。ただ、このビジネスモデルがスポーツの魅力の源泉であるのは良しとして、それだけじゃもったいないと思います。じゃあ新しいものを追う時に、アリーナのサイズだけを追いかけるのではなく、アリーナの活用や試合の視聴にも重きをおかねばならない。