八村塁

一方でウィザーズには「8月中にシーズンが終わる」と辛辣

『Sports Illustrated』は、NBA再開でブレイクが期待される選手として、サンダーのシェイ・ギルジャス アレクサンダー、ナゲッツのマイケル・ポーターJr.、ロケッツのロバート・コビントンとともに、ウィザーズの八村塁の名を挙げている。

サンダー、ナゲッツ、ロケッツに所属する3人がプレーオフに大きな影響を与える可能性があるとする一方で、プレーオフ圏外からのスタートとなるウィザーズについては辛辣だ。プレーオフ最後の枠となる8位を争うマジックやネッツとの差を詰めなければプレーインに進むこともできず、8位でプレーオフに進出しても東カンファレンス首位のバックスにスウィープ(4連敗での敗退)される恐れがあり、いずれにせよ「8月中にシーズンが終わる」としている。

それでも、若い八村にとってオーランドでのシーズン再開が貴重なものになる、と続ける。シュートタッチはまだ未熟で、スペーシングの技術も足りないとしながら、ティップインやダンクだけでないオフェンスを作り出すことができるとし、スピンムーブなどの動きのキレ、ペイントエリア内での接触を恐れない点でパスカル・シアカムに似ていると評価している。

ルーキーシーズンを戦う八村は、途中でケガがあったものの64試合中41試合に出場し、13.4得点、6.0リバウンド、1.7アシストと、特にオフェンスでインパクトを残している。シーズン再開に際してウィザーズでは『2枚看板』のジョン・ウォールとブラッドリー・ビール、シューターのダービス・ベルターンズを欠く状況であり、八村にはこれまで以上の役割が期待される。

ここまでのウィザーズはハイテンポなゲームで得点も多いが失点も多いチームだった。ここにビールとベルターンズが抜けるのだから、バスケットのスタイルも変わることになる。八村が最も得点を稼いだ形は、ドライブで切り崩すビールの動きに合わせてスペースに走り、パスを呼び込んで素早くフィニッシュしたものであり、ペイントエリア内でのフィジカルのぶつかり合いを恐れず、それでいて俊敏な動きのできる八村の特徴をチームのエースと上手く組み合わせたものだった。

しかし、肝心のビールが肩の故障で戦線離脱となった。また平均8.7本の3ポイントシュートを打つベルターンズの離脱により、ここまで1.8本しか打っていない八村にもアウトサイドからのシュートが求められる。

ビールに代わり攻撃の舵取り役となるのは2月に加入したシャバズ・ネイピアーとなりそうだ。引き続きペースの速い攻めを作り出すネイピアーと息の合った連携を取り、八村らしいスピードを生かしたインサイドでの得点をどれだけコンスタントに決められるかが第一。それができた上で相手の注意を引き付けて外に開き、チームメートのためにスペースを作り出す。これを効果的にするには中断前より積極的に3ポイントシュートを狙い、これまでの27.4%よりずっと高い確率で決めることが必要になる。

八村自身がコンスタントに20得点以上を挙げる必要はない。ポイントガードのネイピアーが最初にパスを狙うターゲットとして相手の注意を引き付け、トーマス・ブライアント、トロイ・ブラウンJr.、モリッツ・バグナー、イアン・マヒンミなど八村と同じく伸び盛りの若手が持ち味を発揮しやすい環境を作り出す。こうやってチーム全体が向上すること以外に、ウィザーズがプレーオフでサプライズを起こす道はない。