富樫英樹コーチ「気合いは十分ですが、体力が戻っていない」
新型コロナウイルスの影響は今なお消えていないが、高校バスケ界は少しずつ日常を取り戻しつつある。2018年、創設5年目にしてインターハイ制覇を成し遂げた開志国際では、2月末から部活動を含む学校のすべての活動がストップ。その後も時間を区切り、人数も制限しての自主練しかできない状況が続いたが、6月に入って段階的にチーム練習が再開となっている。
開志国際を率いる富樫英樹コーチも、バスケットの指導から3カ月離れることになった。その間はバスケ部の指導ではなく教頭としての事務仕事に忙殺された。
「今までにないことなので、カリキュラムはすべて新しく組み直しました。学校再開もバタバタと決まったので、この3カ月は本当に大変でしたし、しかも充実感のない疲れで参りました。自分たちの安全はもちろん、生徒たちの安全も守らなければいけないので気が抜けません」と大変さを語る。
6月3日からAチームとBチームの2班に分けて練習を再開し、次第に強度を上げている。ようやくバスケットの指導に戻ることができて、体育館での富樫コーチは実にイキイキしている。それでも今年のチーム作りが難しいことに変わりはない。
「まずは動けないですね。やっぱり3カ月間は長いです。最初の2週間は対人練習なしで、先週あたりからラリー的なスクリメージに入りましたが、選手たちは5分もちませんでした。シュート練習はやっていたので、ノーマークであればそこそこ入ります。ですが走れないし、すぐに息が上がります。みんな『よーし、部活やるぞ』と気合いは十分ですが、体力が戻っていない。体力を取り戻して、試合感覚を取り戻すのは大変です」
そんな中でチームを引っ張っているのはキャプテンの石原史隆と小畠一真だ。取材に訪れた日は小畠がケガで不在だったが、その分まで石原が声を出して雰囲気を高めていた。「練習は再開してしばらくは身体が動かず、チームが下向きになっていました。でも、外部コーチの中村和雄さんが先日来てくださって僕らにも気合いが入ったので、ここからです」と石原は言う。
自分たちの代でインターハイがなくなったのはショックだろうが、石原はあまり気にしていない。「インターハイは1年の時に優勝させてもらって去年は3位ですけど、ウインターカップでは2年連続で悔しい思いをしています。開志国際は冬に弱いと言われていて、先輩たちにもリベンジしてほしいとの言葉をもらっているので、僕たちは冬に懸ける思いが強いんです」
石原キャプテン「冬に弱いという評判をこの代で覆す」
開志国際の先発ポイントガードはジョーンズ大翔で、今は石原が2番手。スクリメージではマッチアップすることになる。「やっぱり先発で出たいし、負けたくない気持ちもあるので、ぶつかる感じはあります。チーム同士もゲーム形式で熱くなりすぎることがあったんですけど、最近はちゃんと建設的に言い合えるようになって、雰囲気は良くなっています」と石原は言う。
自粛期間中はひたすらアメリカの大学やヨーロッパの試合を見ていたそうだ。「ガードが切ってコーナーにパスするようなバスケを学びました。今は1番チームはガチガチでやっていますが、僕たち2番チームにはいつも試合に出ていない選手も入ってきます。だからみんなでボールシェアして、一人ひとりの持ち味を出して積極的にやれるように意識しています。今はそれが上手く行っているのでガードとして楽しいですね。僕はジョーンズに身体能力で劣るんですけど、声掛けを意識して頑張っています」
新潟県ではつい先日、練習試合を行う許可が出た。ここからウインターカップに向けて、まさにイチからのチーム作りとなる。富樫コーチは「バスケができない時間が長かったのですが、そのおかげで『いつも当たり前にバスケができる環境に感謝しなくてはいけないよ』という私の言葉を選手たちが本当の意味で理解してくれたと感じます。そういう意味ではこの経験も無駄ではありません。選手たちはウインターカップ優勝を目標にしていまずが、私はまず新潟県の天皇杯予選に向けてチームを作ります。本来は7月に行われる大会で、インターハイの前なのでケガが怖くて参加しないこともあるのですが、目標がないと選手も難しいので、ここを目指していきます」
キャプテンの石原は言う。「ジョフ・ユセフがいた去年はインサイドのイメージだったと思いますが、今年はアウトサイドも使って走るバスケをします。開志国際が冬に弱いという評判をこの代で覆すのが目標です。冬に勝てないのはインターハイの優勝と3位で気が緩んでいた部分があったと思います。今年はインターハイがないし、北信越新人も3位だったので緩みは全くありません。ウインターカップで日本一を取りにいきます」
新型コロナウイルスに振り回されながらも、高校生プレーヤーたちは強い気持ちでバスケに取り組んでいる。ウインターカップが無事に開催されること、そして彼らが持てる力を存分に発揮して戦えることを願いたい。