文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

残り1.6秒、逆転劇を完結させたフリースロー

3月17日、栃木ブレックスはアウェーで千葉ジェッツとのゲーム1を戦い、鮮やかな逆転勝利を収めた。ビハインドを背負う時間帯が長く続いたが栃木は持ち前の粘りを発揮、ラスト4分間で17-3と猛烈な追い上げを見せ、そして最後に試合を決めたのは喜多川修平のフリースローだった。

71-71の同点で迎えた残り4秒の場面、富樫勇樹の3ポイントシュートが外れ喜多川がリバウンドを拾う。そこからボールをプッシュし、リングへ猛然とアタック。レイアップに持ち込んだところで富樫のファウルで止められた。

「リバウンドを取った時にタイムを見たら、自分が運んで行けばまだチャンスがあると思って、必死にゴールに向かいました。最悪ファウルをもらえればいいやと思っていたので、そこでファウルをもらえて、フリースローをもらうことができたので良かった」とラストプレーの心情を語った。

残り時間はわずか1.6秒。試合の勝敗を左右するプレッシャーがかかる場面だったが、「いつも通り打てました」と喜多川は2本とも成功させた。「もっと残り時間が少なかったりしたら1本決めて、2本目を外したりとか構想もあったんですけど」と、極限の状況下でも『2本目を外す』選択肢を考えられる冷静さが喜多川にはあった。

千葉相手の逆転勝利は「自分たちの自信になる」

序盤にスタートダッシュを決めるも前半で逆転され、最終クォーター残り4分の時点で12点ビハインドと栃木にとっては苦しい試合展開だった。「自分たちのミスから走られたりとか、苦しい時間もやっぱりありました」と喜多川も振り返る。

それでも「誰一人あきらめてなくて、ディフェンスでしっかりストップしてスコアしていこうと、常にみんなで話し合っていました。そこでディフェンスも機能しましたし、ルーズボールの部分もみんなが意識してやれたことが最後につながった」と勝因を語った。

試合終了のブザーが鳴った瞬間、喜多川はライアン・ロシターと勝利の抱擁を交わした。安堵の気持ちから笑顔がこぼれたと話したが、最後まであきらめずに千葉から挙げたこの勝利の持つ意味は大きい。

「自分たちが立ち向かっていかなきゃいけない立場で、我慢して逆転できたことは自分たちの自信になります。でも今日勝っても明日ありますし、1試合1試合ベストのゲームをやっていきたいです」

喜多川がこう語るように、チャンピオンシップ出場を目指す上では、ベストパフォーマンスが常に求められる。特に千葉のようなチームが相手となれば、ベストパフォーマンスをした場合でもラストプレーまで勝敗が分からない試合になるのは昨日で証明済みだ。

しかし、『最後まであきらめずに戦う姿勢』こそが『ブレックスメンタリティ』である。昨日の試合では、それを体現することで逆転勝利を呼び込んだ。喜多川が言う「自信になる」の意味は大きい。喜多川には今後もすべての試合でベストパフォーマンスを期待したい。