文・写真=鈴木栄一

「僕がもっとフリースローを決めていたら」

3月2日、琉球ゴールデンキングスは沖縄市体育館での大阪エヴェッサ戦に78-66で勝利。前半を終え29-29とロースコアでの五分の流れで、苦しんだ部分はあったものの、第4クォーターに32得点を挙げるなど突き放した。その後半、琉球に流れを引き寄せる立役者となったのがアイラ・ブラウンだ。第3クォーターの9得点を含め後半だけで14得点をマーク。代名詞である豪快なダンクを叩き込むなど、文字通りチームに勢いを与えた。

ワールドカップ1次予選のフィリピン戦を終え、沖縄に戻って来たのは2月26日の22時。連敗という結果もあり、肉体的、精神的にも疲弊していたことは容易に想像できるが、そこから心身を立て直したブラウンは、この試合でも約30分の出場で18得点15リバウンドを記録している。

「前半はいつも以上にスローテンポで、後半とにかくゲームのテンポを上げるためにプッシュしようとしていた。前半は良くなかったけど、後半にはインサイドにアタックしてから外にパスをさばけた。そして何本も良いシュートを決めることができた」。試合をこう振り返るブラウンは、代表活動からのリカバリーについては指揮官の配慮に感謝していた。

「とても疲れていたけど、佐々が2日間のオフを与えてくれた。フィジカルだけでなく、メンタル面も疲れていた。過去にとらわれてばかりではいけないので、切り替えたんだ。試合が始まれば気持ちのスイッチが入ったよ」

この試合、ブラウンはフリースロー10本中6本成功。もともと成功率が高い選手ではないが、それでもフィリピン戦の10本中2本成功は痛恨の結果だった。この点について彼はこう分析する。

「身体がいつものように反応していなかった。あれもこれもやらないといけないという心境で焦りがあったんだと思う。精神面でいつもの状態ではなかった。それでナーバスになり、自分をスローダウンさせてしまった。僕がもっとフリースローを決めていたら試合に勝てていたと思う」

リバウンドは「サイズの問題よりメンタルだ」

また、チャイニーズ・タイペイ戦、フィリピン戦を終え、あらためて実感したのがリバウンドでの差だった。「僕たちのガード陣は点を取れる。やはり問題はリバウンドだ。フィジカルに強くてリバウンドを取れる選手が必要だ」

さらに、リバウンド強化のためには「サイズの問題もあるけど、85%はメンタルだ。ファイトを続け、決して引いてはいけない。インサイド陣が戦っていなかったわけではないけど、足りなかった。フィジカルなバスケを1試合を通して継続できていない」と、精神面でよりタフにならないといけないと続ける。

「僕はアンダーサイズだけどパワーはある。僕もリバウンドの問題について責任を負っている」

フリースローの件も含め逆境から逃げずに真摯に受け止める回答には、代表の中心選手としての強い決意と覚悟を感じる。とはいえ、代表活動はリーグ戦が終了するまで一次休止。今のブラウンは、「これでキングスに集中できる。シーズンが終わったら代表に専念することになるよ」と、琉球をリーグ王者に導くことに気持ちを切り替えている。残りシーズン、琉球にとってはさらに頼もしく、相手にとってはより嫌なアイラ・ブラウンとなることは間違いない。