文=鈴木健一郎

立ち向かう力、乗り越える力、そして日の丸の誇り

7月4日、東京都内にて、リオ五輪に出場する女子バスケットボール日本代表の壮行会が行われた。200名を超す支援者を集めたこの席で、内海知秀ヘッドコーチと吉田亜沙美キャプテンが語った『決意表明』を紹介したい。

内海ヘッドコーチ
「このリオに向かって、我々はしっかりと準備してきたつもりです。立ち向かう力、乗り越える力、そして日の丸の誇り。その3つをしっかりと胸に秘めて、リオで挑戦し、そして日本のバスケットを世界に見せたいと思います」
「このリオの結果が次の東京に必ずや繋がることと思います。そういう意味も含めてこのリオは非常に重要な大会です。是非、選手がコートで良いプレーができるよう、選手その肩をしっかり押してください。頑張ってきますので、応援よろしくお願いします」

吉田キャプテン
「本日は壮行会を開いていただき、ありがとうございます。昨日はオリンピックの結団式と壮行会に出席しました。たくさんの方々に応援されていることを感じ、胸が熱くなりました。私たち選手にできることは、一人でも多くの方に感動と勇気を、バスケットを通して伝えていくことだと思います」
「オリンピックではメダルへの挑戦をスローガンに、しっかりと結果を残して、その中でも夢の舞台で、楽しんでプレーすることを、そして川淵前会長に海外旅行に連れてっていただけるように、それをモチベーションとしてリオで暴れてきたいと思います。ご声援よろしくお願いします」

川淵三郎前会長の体を張った「ニンジン作戦」が功を奏す?

ちなみに、吉田キャプテンがしばしば口にする「川淵三郎前会長との約束」とは、前会長が選手たちに対して「メダルを取ったらポケットマネーで海外旅行に連れて行く」と約束したことを指す。昨年のアジア大会では、「優勝したら寿司をオゴる」のニンジン作戦ならぬ寿司作戦で、選手たちは見事に優勝を勝ち取った。それがスケールアップして「海外旅行」になったのだ。

この日も日本代表を激励するために駆け付けた川淵前会長は、この約束の話で会場を笑わせた。「最初は韓国に連れていこうと思ったんですが、吉田選手が『何度も行っている』と言う。じゃあサイパンならアメリカだからいいだろうと言ったら、渡嘉敷選手が『イタリアに行きたい』と言い出した。スタッフも含めたら結構な人数で、個人で支払える金額じゃない。参っちゃったんだけど、思い直しました。オリンピックでメダルを取って帰ってきてくれるなら、いいだろうと。ちゃんと約束は守ります!」

本来、ニンジン作戦は必要ない。オリンピックとなれば選手たちのモチベーションはそれだけで最高潮、練習でも試合でも常に100%の集中力で取り組めるはずである。ただ、この「ニンジン作戦」は、大舞台を前に緊張してしまってもおかしくない選手たち、オリンピックを経験した者が一人もいないこのチームの、メンタル的な緩衝剤になる。

この壮行会も、始まった当初は選手たちの表情がやや固かったが、川淵前会長が海外旅行の話をした後は、場の雰囲気が和やかなものになった。集合写真もこの表情、である。

もっとも、明日からはチーム強化の試金石となるセネガルとの3連戦がスタートする。リラックスした後は気を引き締めて──。内海ヘッドコーチが言うとおり、このチームは五輪に向けて良い準備ができているようだ。