取材=小永吉陽子 文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、小永吉陽子

アジア屈指のスコアラーとしての存在感を発揮

バスケットボール男子日本代表はワールドカップ1次予選でここまで0勝3敗と苦戦が続く。今日は敵地でフィリピンと対戦。最初の1敗を喫した相手がこのフィリピンで、ホームの駒沢体育館で敗れたリベンジを期す。

日本の注目選手を挙げるなら、やはりエースの比江島慎だ。ここまでの3試合で51得点をマーク。これはアジア予選全体を見ても5位の数字。フィールドゴールは36本中19本で52.8%、3ポイントシュートも7本中3本で42.9%、フリースローは12本中10本の83.3%と、すべて堂々たるパーセンテージを残している。中でも比江島の強みはガードながらインサイドにアタックしてシュートを決めきる能力。これまでの3試合で決めたフィールドゴールの総数19本に対し、9本がペイントエリア内で決めたもの。現状、ゴール下で勝負を仕掛けて結果を出せるのはチームで比江島ただ一人という印象だ。

勝ちがついてこない苦しい状況ではあるが、比江島は自身の好調を自覚している。前日練習では22日のチャイニーズ・タイペイ戦を受けての指揮官フリオ・ラマスからの指示について「特には何も言われていません」と語る。

「下を向かずに切り替えろ、とは言われました。あとは自信を持て、もっともっとアグレッシブにやっていいと言われていて。自分では自信を持ってやっていたつもりですが、もっとガンガン行っていいんだと。だから明日はもっと行くつもりです」

「何もさせてもらえなかった」5年前のリベンジを

会場となるモール・オブ・アジア・アリーナは2万人収容。満員の観客で埋まり『完全アウェー』になることが予想される。しかし比江島はこれを5年前に経験済みだ。2013年8月のアジア選手権、2次ラウンドの初戦で日本はホスト国フィリピンと対戦し、71-90で敗れている。当時、代表では若手の一人だった比江島はこの試合で9得点を挙げているが、「ものすごい大歓声で、何もさせてもらえなかった」という記憶がある。

それでも「イメージはできています」と自信はある。「僕もあそこからいろんな経験も積みましたし、いろんなリベンジもあります。楽しんでやるつもりです」

チームについては「まだ作っている段階なので、試合をするしかない。なんだかんだ、国際試合をやることで経験になると思います」と、勝てないながらもチームの成長を強調する。だからこそ、1勝すすることで流れは変えられる。「とりあえず、勝つしかないので」と比江島。「超満員の中でやるのはなかなか味わえない経験だと思うので、そこは楽しんで。そして勝ちます」

オフェンス面、特にペイント内での得点であったり勝負どころでの得点で比江島に頼り切りな面は気になるが、誰もがエースと認める存在がいることはチームにとって間違いなくメリットだ。自分が引っ張ることで、チームが経験を積んで成長することを比江島は信じている。勝てない今だからこそ、『エースの自覚』を持った比江島に大きな期待を寄せたい。