キャピタルワン・アリーナでのNBA観戦で感じた、バスケットボールへのリスペクト

2018/02/21
NBA&海外
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文・写真=泉誠一

長年応援し続けているウィザーズ戦を応援するため、3年ぶりにNBAを生観戦。前回渡米時、Bリーグはまだ準備段階であり、某クラブスタッフと一緒に演出やアリーナのホスピタリティなどを目の当たりにした。Bリーグも無事スタートを切り、盛り上がりを見せている。両リーグの観戦スタイルを比較しながら、楽しいアリーナでのひとときを過ごしてきた。

全席指定により、時間にゆとりがある観戦スタイル

NBAとBリーグではチケットを買うところから大きく異なる。2万人強の集客を誇るウィザーズの本拠地は全席指定。コートに近い席はもちろん、4階にある最上階でさえ、座席を一つひとつ指定して購入することになる。早く行って座席を確保する必要がないため、開場は試合開始の1時間前。長蛇の待機列はなく、混み合うこともなくアリーナに入ることができた。また、見やすい角度が保たれていることで、4階席からでもコートまでの遠さを感じることはない。今年1月の天皇杯で使用されたさいたまスーパーアリーナも同様であり、すでに体感された方はイメージがわくはずだ。

チケットやウェブに記される試合開始時間は19時。Bリーグであれば、この時間がティップオフとなる。しかし、ウィザーズ戦を始めとしたNBAにおいて、19時に始まるのはオープニングセレモニーだった。場内が暗転し、国歌斉唱にボルテージが高まる。大型ビジョンに映し出される映像はファンに向けたウォーミングアップ。声援が注がれる中、スターターが紹介されてティップオフ。この間、だいたい15分ほど。Bリーグで見られる試合約30分前の選手入場セレモニーはなく、NBAでは試合開始時間がすべてのスタートを意味する。

明るくなったアリーナを見渡すと観客席はまだまだまばら。全席指定ということもあり、ハーフタイムに向かって徐々に埋まっていくのがNBA流だ。その感覚は、平日午後18時にプレーボールとなる日本のプロ野球に似ている。試合が第2クォーターへと進み、気がつけば満席になっていた。

演出のマストアイテム『大型センタービジョン』

NBAや諸外国でも演出の主流になっているのが、センターサークルの上に吊られた大型ビジョンである。Bリーグの各クラブでも導入が増え、世界基準に近づいている。ファンを映して参加を促し、見ているだけでも楽しい。SNSと連動させたアトラクションも多く見られた。

今回、ウィザーズ戦を2試合観戦したが、初戦のサンダー戦は2万356人で満員御礼。接戦だったこともあって最上階にもMCやマスコット『G-WIZ』が上がってきて、アリーナを一体化させていた。しかし2戦目は空席が目立ち、1万5599人との発表。どうやらNBAでは、シーズンチケットホルダー分は空席でも集客数にカウントするらしい。売れているのだから当然と言えば当然ではあるが、数字以上に閑散としていた。初戦以上に接戦だったにもかかわらず、集客数に比例するようにTシャツ・トスなど投げ入れ系の演出が減少。最上階では何も起きず、状況によって変化するようだ。

試合中は息つく暇なく盛り上げるケースも少なくはないBリーグのアリーナMCだが、NBAではタイムアウトなど試合が止まった時にしか出番はない。試合中は別のコートアナウンサーがシュートを決めた選手やファウルなどコート上で起こったことを淡々と説明するだけである。

一方で、MCがコート上に立って試合を進行する機会がNBAでも、NCAAの試合でも見られた。ハーフタイムに行われた子どもたちによるエキシビジョンゲーム時は、MCが踏み込んで盛り上げていた。逆に言えば、プロの妙技で魅了する試合中は過度な演出を避ける、バスケットボールへのリスペクトが感じられた。

胸躍る非日常へと誘う、2万人収容のアリーナ

体育館にスピーカーを設置する日本の現状とは異なり、ウィザーズの本拠地であるキャピタルワン・アリーナではジャスティン・ティンバーレイクやP!NKといったビッグアーティストのライヴも日常的に行われており、アリーナの音響も申し分ない。隣に座る人との会話が聞き取りづらくなったり、ファンの声援を妨げることもない。

場内で流れる音も、攻守が変わるたびに鳴り続けるのではなく、メリハリがあった。接戦時ではあえて無音にし、観客の声援が会場を包むことでさらに盛り上がっていく効果がある。ファンとチームの信頼関係によってできたバスケットボールエンターテインメントの究極の形であり、理想型だ。昨シーズンのBリーグチャンピオンシップで優勝した栃木ブレックスと同じ手法である。

2万人収容のアリーナにいるだけで気持ちが昂ぶる。コンコースに設けられたチームショップに胸踊らされ、ゲートをくぐると広がる空間が非日常へと誘ってくれた。これと同じ感覚は、開幕が待ち遠しいプロ野球やJリーグの大きなスタジアムでも味わえる。

国民性や文化の違いもあるので、どのスタイルが正解という話ではない。だが、どんなスポーツであってもファンがチケットの対価として求めているのは、競技そのものである。煌びやかに見えるNBAだが、一番光っているのはコート上で戦っている選手たちだった。