写真=Getty Images

不運の連鎖によりキャリアの危機に?

アイザイア・トーマスは辛い時期を過ごしている。まだセルティックスにいた昨シーズンのプレーオフでは、交通事故で妹を亡くした心痛と向き合いながらもプレーを続け、準決勝のウィザーズとの初戦では前歯を折りながら33得点9アシストの活躍でチームを勝利に導いた。続く第2戦では、亡き妹の23回目の誕生日にプレーオフキャリアハイの53得点を叩き出し、勝利を妹に捧げている。この時点ではセルティックスのエースであり、彼が捧げる忠誠にクラブも盤石の信頼を寄せているように見えた。

だが、カンファレンス・ファイナルではキャバリアーズとの力の差を見せ付けられ敗退。トーマスはこのシリーズの途中で以前から抱えていた右股関節の痛みが限界に達し、戦線離脱した。するとセルティックスはカイリー・アービングのトレード要求に反応し、トーマスを交換要員とするトレードを成立させた。

トーマスの苦難はまだ続く。股関節の痛みはなかなか引かず、新天地でのデビューは遅れた。新生キャブズはうまく噛み合っておらず、トーマスは長期離脱からの復帰と同時にカイリーの穴を埋める働きを期待された。結局、トーマスは周囲とのケミストリーを構築できないまま、トレードデッドラインにレイカーズへトレードされることになった。

トーマスは今シーズン終了後にフリーエージェントとなる。昨シーズン終了直後の時点で彼はセルティックスを離れることなど全く考えておらず、球団への忠誠を貫くとともにマックス契約での契約更新を希望していた。それがマックスかどうかは別として、セルティックスはエースとしての待遇を彼にオファーするであろうと思われていた。

ところが今はどうだろう。再建がうまく進み始めたレイカーズがトーマスを迎え入れたのは、次代のエースとして期待するからではない。レイカーズが見るトーマスの魅力は、来シーズン以降のキャップスペースを空けてくれる点だ。レイカーズのポイントガードはロンゾ・ボール以外にあり得ない。トーマスはどこと交渉するにせよ、大型契約は望めない状況に置かれてしまった。

結果を出せば一躍ミリオネアになれるが、キャリアの転落もあっという間に起こるのがNBAだ。レイカーズは直近10試合を8勝2敗と好調で『救世主』を必要としていない。トーマス歓迎ムードよりも、トレードで出て行ったラリー・ナンスJr.とジョーダン・クラークソンの退団を惜しむ気持ちのほうが強いように見える。

トーマスの代理人は「トーマスはベンチスタートしない」と発言し、クライアントの立場を守るべくレイカーズを牽制している。だが、レイカーズはロンゾをケガで欠く今でさえ、ポイントガードをブランドン・イングラムに任せる姿勢を見せている。もちろん、トーマスは何もできない凡庸な選手ではない。彼の得点能力をルーク・ウォルトンがうまく活用することを願いたい。

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