文・写真=鈴木栄一

激戦の東地区で健闘する北海道、攻守の大黒柱

昨シーズンのレバンガ北海道は、残留プレーオフへ回ることは避けられたが、23勝37敗と黒星先行で終わった。シーズン終了後には日本人エースの西川貴之が退団し、さらには東地区に降格2チームと入れ替わりで川崎ブレイブサンダースとサンロッカーズ渋谷が編入された。これで東地区は北海道を除きチャンピオンシップに出場したチームとなり、苦戦が予想された。

しかし実際は、シーズンの約半分を終えて17勝15敗。昨シーズンは早々に脱落したチャンピオンシップ出場権争いを続けている。この躍進には様々な要因があるが、その中でも一番の要素はマーク・トラソリーニの活躍だ。

カナダ出身のトラソリーニは、カナダ人では史上最高のNBA選手と評されるスティーブ・ナッシュと同じサンタクララ大学で1年生から出番を獲得し、2年から4年にかけては中心選手として獲得。イタリアで2年、フランスで1年を過ごし、今シーズン開幕前に北海道へと加入した。

開幕から3試合連続で20得点以上を挙げると、10月15日の川崎戦で22得点、11月17日のアルバルク東京戦で28得点と強豪撃破の立役者になるなど不可欠なエーススコアラーとなっている。

「インサイドだけでなく、アウトサイドからでも同じように得点できるなど、攻撃面でいろいろなパターンを持っている」と自らの強みを語るように、トラソリーニの魅力は206cmのサイズがありながらゴール下だけでなく、スピードに乗ったドライブに3ポイントシュートと、リングから離れた位置からでも勝負できるビッグマンであることだ。

それでも彼は「チームのシステムは素晴らしい。攻撃面において僕のやりたいことをやらせてくれるし、チームメートは僕がプレーしやすいようにボールを渡してくれる」と、自らの好成績は周囲の助けがあってこそと強調する。

チームの危機にも「自分がやることはいつも同じ」

それでも今、チームは苦しい状況に置かれている。トラソリーニと並び新加入で中心選手となったグレゴリー・ウィッテントンの契約解除、さらに故障者が複数出ている。前節の栃木ブレックス戦では、戦力が揃わない影響が出てしまい2試合連続で大敗を喫してしまった。

トラソリーニは言う。「僕たちにとってタフな週末となってしまった。ディフェンスがひどくて多くの得点を与えてしまった。これはフラストレーションを感じることだけど、今は難しい状況にある。チームとして努力を続けて、なんとか乗り越えてたい」

この危機にトラソリーニは「自分がやることはいつも同じだ。アグレッシブなプレーを続け、特に攻撃面では得点することでチームを助けていきたい」とエースとしての自覚を見せる。ただ、それは個人でチームを引っ張ることとは違う。

「ディフェンスやリバウンドをより頑張りたい。例えば自分が1試合30得点を狙う必要はない。チームとしてステップアップし、スタッツに出ないような小さなことについても大切にしていきたい」と、得点だけでなく泥臭い仕事でもチームに貢献する意識を持っている。

「ケガ人が戻ってくれば十分に戦っていける」

不祥事にケガ人、そして最下位転落。前を向くのが難しい状況になっているが「特に同じ東地区の相手に勝つことが重要」とトラソリーニは闘志を燃やしている。「早く新しい外国籍選手が加入することを望んでいるし、ケガ人が戻ってくれば十分に戦っていける」と意気込む。

まだシーズンは折り返したばかり、リーグ残留だけでなく、上位を狙えるチームへと次のステップに進めるのか正念場を迎えている。当然、トラソリーニにかかる期待は大きい。2月はA東京、SR渋谷、川崎と東地区の強豪との対戦が続く。当然、彼はアレックス・カーク、ロバート・サクレ、ニック・ファジーカスといった強力ビッグマンとマッチアップし、勝たなければならない。

北海道が踏ん張り、さらに成長するには、より一層のトラソリーニの活躍が不可欠。重責ではあるが、ここを乗り越えることができれば北海道は胸を張ってB1の強豪と言えるし、トラソリーニはリーグ屈指の実力者と呼べるようになっているはずだ。