保岡龍斗

大学3、4年次の特別指定も含め秋田ノーザンハピネッツでの4シーズン目を終えた保岡龍斗は、シーズンを重ねるごとにプレータイムや得点を伸ばし、今シーズンは平均プレータイム20.8分、9.1得点、1.6リバウンド、1.7アシスト、1.1スティールを記録。チームの成長と足並みを揃えるように、若い彼もプロの世界で実力を伸ばしている。3人制バスケ『3×3』の日本代表候補にも選出されている保岡に、今までのプロキャリア、そして3×3との両立について話を聞いた。

「子供と一緒に過ごせる時間は幸せです」

──今は不要不急の外出ができない状況ですが、どのように過ごしていますか?

暇しています(笑)。家にトレーニング器具はないですし、外でトレーニングもできない状況なので、本当に何をしたらいいんだろう、という感じですね。でもこの間、鏡で自分の身体を見たらガリガリになっていて、ちょっとショックでした。今は運動もせずにご飯を食べているだけなのに、僕はトレーニングをしないと体重がどんどん減っちゃうんです。なので危機感を感じて、この間ネットでトレーニング器具をポチっとしました。まだ家に届いていないので、器具が届くまではお休み期間ですが(笑)。

──本来であれば今は忙しい時期だと思います。ですが、今は家族との時間が増えたということですね。

子供と一緒に過ごせる時間は幸せです。シーズン中は1週間ぐらい秋田に帰れないこともあって、久しぶりに子供に会うと僕の顔を見て泣くんですよ。それが今では僕の抱っこでも寝るようになったのでうれしいです。もしシーズンが続いていて、そのまま3×3の合宿に入っていたら、家に居ない時間がさらに増えていたと思うので、物心ついた頃にパパだと認識されないんじゃないかなと覚悟していましたから(笑)。

──それではバスケットについて聞かせてください。秋田でプレーして4シーズン目でしたが、今までとの変化はありましたか?

過去3シーズンは自分のプレーがどこまで通用するかということに意識が向いていて、そこまで勝利に対して貪欲ではなかったんです。試合では勝ちたかったですが、「どうやったら試合に出られるのか?」と本当に自分のことばかり考えていました。B2に降格したシーズンはもちろんB1に上がりたいと思っていましたが、それでもまだどうすれば試合に出られるのか、ヘッドコーチからの評価を得たい、という気持ちの方が大きかったです。

ただ、今シーズンからベテラン選手も加入して、そこで初めて自分のことよりもチームが勝つためにはどうしたらいいのかを考えるようになりました。

保岡龍斗

「与えられた短いプレータイムで自分には何ができるのか」

──自分と同じポジションに今まで他チームで主力として活躍していた経験のある選手が入ってくることで、プレータイムが減ってしまう危機感は大きかったですか?

古川(孝敏)さんのプレーはずっと見ていましたし、日本代表にも選ばれる素晴らしい選手です。正直、古川さんが入る時点で、僕のプレータイムはそんなにないだろうと割り切っていました。なので、与えられた短いプレータイムで自分には何ができるのか、ということを考えるようになりました。それに古川さんの行動や発言は自分にとってもプラスになります。

試合に出たい気持ちもありますけど、今の僕はまだ成長段階です。周りの選手の良いモノをどれだけ盗めるかと考えていたら、自然と自分のことよりもチームの勝利を考えるようになりました。なので、今シーズンはプレータイムが減ることへの危機感はありませんでしたね。

今はアグレッシブにプレーすることを考えていますが、今後は場面ごとの冷静な状況判断もできるようになりたいです。技術面も含めてですが、これからは勝負どころでの勝ち方などメンタル面の強化もしていきたいです。

──今シーズンの秋田は、19勝22敗とB1で戦った中で一番良い成績を残し、保岡選手個人としても得点やリバウンド、アシストなどのスタッツが軒並み上がりました。

積極的にシュートを打てたことは成長した部分だと思います。ただ、古川さんがケガで離脱したり、特別指定の多田(武史)が加わったのもシーズン終盤だったので、2番ポジションの選手が少なかったこともあります。ヘッドコーチが自分を使ってくれていたので、信頼は得られたのかなと素直に感じています。

ただ、シュートアテンプトが多くても成功率が低いままでは、仲間からの信頼は得らえません。今の課題は効率良く、そして良いシュートを打つタイミングを見極めることです。

保岡龍斗

「オリンピックが1年延期、自分を見つめ直す時間に」

──保岡選手は3×3の日本代表選手としてワールドカップに出場し、レギュラーシーズン中も毎月の3×3代表合宿に参加していました。5人制との両立は大変でしたか?

めちゃくちゃ大変でした。本当にヘッドコーチの(前田)顕蔵さん、秋田のスタッフさんや選手、社長を含めてみんなが理解してくれなかったら3×3との両立はできませんでした。

特にオフ期間には代表合宿やヨーロッパ遠征にも3週間ぐらい行っていたので、秋田の練習にはほとんど参加できていない状況でした。幸いにもペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)前ヘッドコーチのバスケットを知っていたので、秋田のベースは分かっていました。もし、これが一からのスタートだったら間違いなく今シーズンは試合に出られなかったと思います。そんな中でも顕蔵さんは僕を試合で使ってくれて、特にシーズン中はケガのリスクもあるけど代表合宿にも参加させてくれていたので感謝しています。

それに僕は東京オリンピックをすごく意識していて、正直今年に関して言えば5人制よりもオリンピックのことを考える時間の方が多かったかもしれません。毎月の代表合宿にも強い思いを持って参加しています。2月の大阪エヴェッサ戦でケガをしてしまったんですが、その後に3×3の代表合宿が控えていたので顕蔵さんの了承を得て、シーズンを休ませてもらいました。それぐらいオリンピックには強い思いがあったので、こういう形で練習が途切れてしまったことは残念ですね。

──3×3の代表選考も新たな選手が入ってきたりと厳しくなっています。どんなところをアピールしていきたいですか?

アイラ(ブラウン)や橋本(拓哉)さんも入ってきてメンバー競争もどんどん激しくなっていました。そんな時に東京オリンピックの1年延期が決まったので、ここはもう一度自分を見つめ直して、良いところを伸ばして悪いところを克服するための時間をもらったとポジティブにとらえています。

僕が初めて3×3のアジア大会に出た時に、(トーステン)ロイブルコーチから「ディフェンスを評価している」と言われました。でも練習では橋本さんに抜かれることもあり、そういうことは練習からなくさないといけません。秋田もディフェンスのチームなので、秋田での練習をしっかりとしていれば3×3にも繋がってくると思って取り組んでいます。

──秋田のファンの皆さんは5人制でも3人制でも保岡選手を応援しています。最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

今シーズンに19勝できたのは間違いなくファンの方が、負けている時も勝っている時も変わらずに応援してくれたおかげです。本当に感謝しています。勝率は5割に届きませんでしたが、ハピネッツはこれからのチームです。僕個人としては、来シーズンもハピネッツでプレーしたいですし、プレーできるようになった時は、自分がシュートを決める度に大きな声でまた応援をしてもらいたいです。皆さんの声援が選手の力になるので、引き続き応援していただけたらうれしいです!