文・写真=鈴木栄一

「一発勝負の怖さをあらためて感じました」

今シーズンのBリーグで全体勝率トップをひた走るアルバルク東京。そのタレント集団を天皇杯のベスト16で破り、さいたまスーパーアリーナでのファイナルラウンドに駒を進めたのは京都ハンナリーズだった。準々決勝では西宮ストークスに95-72と完勝。勢いに乗っていたはずだったが、準決勝の千葉ジェッツ戦では100点ゲームで敗れる結果に。ベスト4進出は一つの成果ではあるが、決勝でシーホース三河を破って天皇杯連覇を果たす千葉との間にはまだ力の差があることを認識させられた。

今シーズン、開幕から不動の先発ポイントガードを務めて京都の躍進に大きく貢献する伊藤達哉は、「完全に弱気になってしまいました」と千葉との一戦を振り返る。「また、意識して取り組んでいる速攻を全然出せない。さらに外のシュートも途中から入らなくなったことで、チームが全体的に何をやっていいのか分からなくなった時間が続いてしまいました」

シーズンここまでを振り返ると、京都は伊藤やジュリアン・マブンガ、ジョシュア・スミスといった新戦力の活躍もあり、昨シーズンに比べ攻撃力がアップ。それが勝率5割以上でのシーズン折り返しにもつながっている。だが、一方でbjリーグ時代から作り上げていたチームの根幹である堅守を発揮できていない。

堅守からの速攻は、京都がさらなるステップアップを果たすために欠かせない要素なのだが、このスタイルではリーグ屈指の力を持つ千葉に、大一番で差を見せ付けられた格好となった。

リーグ戦とは違う一発勝負のベスト4という大一番だからこそ痛感した強豪との差はどこにあるのか。伊藤は場数の違いに加え、「点差が離れてしまった時、どうしても全員が外国籍選手に頼ってしまうところがあるので、そこをチームとして改善しないといけないと思います」と、特定の選手に依存しない総合力の大事さを説いた。

さらに「3次ラウンドで日本代表の3人はいなかったですが、アルバルクさんに勝てたことがすごくチームにとって大きかったです。そして、ベスト8で西宮さん相手に最初良い流れで入って勝った中、こうやって完敗したので一発勝負の怖さをあらためて感じました」と続ける。

「周りをもっと生かせるようなガードに」

12月下旬には敵地で地区首位の琉球ゴールデンキングスに終了間際の勝ち越しによる劇的勝利。また、翌週にはリーグ最高勝率のシーホース三河相手に1勝1敗の戦いを演じて上り調子だっただけに、今年最初の天皇杯を良い形で終えられなかったのは痛手だ。

「上に行くのは甘いものじゃないと感じました」と語る伊藤だが、それと同時に、強豪に対抗できるポテンシャルを備えているとも言う。「今までやってきたことを継続しつつ、変えるべきところをしっかり修正できれば、勝てない相手でもないと思っています」

京都が強豪に対抗できるチームになるため、個人としては「外のシュートだったり、ドライブをするのもいいんですが、周りをもっと生かせるようなガードになれればいいなと思います」と後半戦は司令塔としてゲームメークに磨きをかけることを意識している。

また、一方で「学生の頃はがむしゃらにやっていて、それは今も変わりません。今も本当にがむしゃらにやることが自分には大事だと思っています」と、良い意味で学生時代のチャレンジャー精神を継続することが重要と強調する。

昨シーズン途中、特別指定選手で加入しながら出番がなかった伊藤だが、今シーズンは現在、新人王も狙えるパフォーマンスを披露している。彼が持ち前のがむしゃらなプレーに加え、周囲をより生かす冷静さ、視野の広さを向上させることができれば、昨シーズン逃した京都のチャンピオンシップ出場が近づくのは違いない。