ステフィン・カリー

ウィギンズも脱帽「全員を押し上げる力があった」

ブランクがあってもカリーはカリーだった。3月5日のラプターズ戦で4カ月ぶりに復帰したウォリアーズのステフィン・カリーは、27分間のプレーで23得点7アシストを記録。試合には113-121で敗れたが、指揮官のスティーブ・カーが「完全に僕らが知っているステフのプレーだったね」と笑顔で振り返るエースの復帰戦となった。

『僕らが知っているカリー』と考えれば23得点は物足りない数字かもしれないが、この試合でのカリーはあくまで試運転。接戦の第4クォーターにもベンチに座る時間が長かった。事前にカリーが「プレータイムは24分から28分になるだろう」と言っていた通り、プレータイムに制限がかけられていたようだ。

それでもカリーの復帰でチームメートも奮起。ラプターズを相手に一歩も引かない戦いを展開する。

最後にカリーが投入されたのはラスト4分を切ったところ、102-108とビハインドの場面。当然、ラプターズのディフェンスの意識はカリーに集中する。ボールを持っていない時もノーマン・パウエルがフェイスガードでつく上に、かわされてもすぐにヘルプが寄れる状況を作っていた。だがカリーはこれを逆手に取り、速いテンポでボールを動かして味方のチャンスを演出。かと思えばドライブで切り込んでフローターを沈めるなど、相手ディフェンスを手玉に取った。残り1分半にはアンドリュー・ウィギンズの3ポイントシュートで2点差に迫っている。

だが、ラプターズもここで意地を見せ、パスカル・シアカムがドライブからの得点で突き放し、ウォリアーズの勢いを断ち切った。

敗戦の後だけにカリーに笑みはなかったが、それでも手応えは十分以上に得られた様子。「あまりスタッツのことは考えずに試合に入ったんだけど、最初のシュートを放った時点で良い感覚はあった。楽しかったよ」と話す。

特筆すべきはスタッツよりも、試合全体、会場全体を巻き込むカリーの存在感が何ら変わっていなかったことだ。「ステフの復帰戦だと分かって、僕らも盛り上がった。レギュラーシーズンの試合ではなかなかないことだよ」と言うのはカイル・ラウリーだ。今シーズン途中にウォリアーズに加わったウィギンズも「僕ら全員を押し上げる力があった。すごいよ」と驚きを隠さない。

ここからウォリアーズはシクサーズ、クリッパーズ、ネッツ、バックス、再びラプターズと強豪相手の戦いが続く。ここまで最下位と苦しい戦いを続けたウォリアーズだが、ここから先は別のチームとなる。どんなチームにとっても油断できない強敵となりそうだ。カリーは言う。「僕らは『新しい何か』を作り出そうとしている。それを見ていてほしい」