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ジャバーの代名詞『スカイフック』はジークンドー由来!

現役時代にバックスとレイカーズで活躍したカリーム・アブドゥル・ジャバーといえば、NBA歴代1位となる通算3万8387得点を記録したレジェンドだ。選手としての評価は今さら説明するまでもないが、ジャバーの代名詞となっているフィニッシュムーブ『スカイフック』は、現代のNBAでも使う選手がいるスキルで、身長218cmのジャバーが左右両方の手から放つ『スカイフック』は防ぎようがなく、当時のNBAでは無敵の必殺技とも言われた。

この『スカイフック』の動きについて、ジャバーが『ESPN』に語った内容が実に興味深い。ジャバーは、現役時代にブルース・リー主演映画『死亡遊戯』に敵役として出演したことがある。高校時代から格闘技の心得があったジャバーは、UCLA時代もマーシャルアーツのクラスを受講し、縁あってリーに巡り合った。2人は意気投合し、ジャバーはリーが考案した格闘技『ジークンドー』の道場に通い始め、1967年から71年にはリーから直接指導を受けていた。

ジャバーは、ブルース・リーについてこう語る。「彼は新しいものを生み出すイノベーターで、格闘技を進化させた。ジークンドーはあらゆる格闘技の動きを取り入れて考案されたもの。無駄な動きが一切ないんだ」

さらには『スカイフック』の真髄についても「最小限の動きから放つ効果的なシュートだが、一瞬の内に緩急を切り替える動きが必要だ」と語る。

実は、ブルース・リーの精神をバスケットボールに生かした選手がもう1人いる。現在ナゲッツでプレーするジャマール・マレーだ。マレーは、リーのファンだった父親の影響を受け、幼い頃から集中力を養う訓練を続けた。そのおかげで身に着けた年齢以上の落ち着きを、NBAのコートで生かしている。

マレーの武器は、冷静な判断力と、緩急の付け方で相手を翻弄する高い技術。その瞬間の状況を瞬時に判断し、時に相手を引き付けオープンなチームメートにパス、または自ら仕掛けて得点を決める。あるいは、ゴール下で絶妙なポジションを取り、193cmであってもビッグマンを相手にリバウンドを奪うこともあるほどスマートなプレーが持ち味だ。

そのマレーもブルース・リーから受けた影響について『ESPN』に語っている。「姿勢、心の準備、気持ちの強さ。これこそ僕が彼から学んで、バスケットボールに生かしている部分だね」

もしブルース・リーが生きていたら、今年で77歳になっていた。70歳のジャバーと20歳のマレーによる鼎談が実現していたら、彼らは何を語っていただろうか? きっとバスケットボールファンにとってだけではなく、人生を送る上で役に立つ話が聞けたに違いない。

生前に交流のあったジャバーだけではなく、これからの世代を背負うマレーをも感化したブルース・リーの影響力のすごさを、あらためて実感させられるエピソードだ。