デリック・ジョーンズJr.

ゴードンが前代未聞『タッコ・フォール越え』成功も優勝ならず

2月15日にシカゴのユナイテッド・センターで開催されたオールスターサタデー・イベントの最後を締めくくったスラムダンクコンテストは、ヒートのデリック・ジョーンズJr.が優勝した。

2017年以来の出場となったジョーンズJr.は、この日が23歳のバースデー。予選1本目にはバースデーケーキが登場しロウソクの火を吹き消すと、この日のイベント、スキルズチャレンジで優勝したチームメートのバム・アデバヨを立たせ、人間越えワンハンドダンクを成功。2本目には360°レッグスルーダンクという高難易度の試技を一発成功させて満点を叩き出し、決勝に進出した。

決勝で激突したマジックのアーロン・ゴードンは、予選から超がつく身体能力をシンプルにアピールする方法を取り、レッグスルー・リバースダンク、チャンス・ザ・ラッパーを立たせて人間越えから捻りを加えてのワンハンドダンクを叩き込み、2本続けて満点をマークして決勝に勝ち進んだ。

すると決勝戦は、ザック・ラビーンとゴードンによる『伝説の2016年』を彷彿させる熱戦に発展。ジョーンズJr.が2人を縦に並べての人間越えレッグスルーワンハンドダンクを成功させて50点満点を記録すれば、ゴードンは再びチャンス・ザ・ラッパーに協力を要請し、予選2本目と同様に人間越え180°ワンハンドダンクを一発で決めて、こちらも満点。

ジョーンズJr.の2本目は、サポーターがバックボードにボールを当て、それをつかんでのレッグスルーダンク。こちらも1回目の試技で成功させて50点。満点でなければ敗退してしまうゴードンは、2本目でチームメートのマーケル・フルツを呼び、コンビダンクを披露。フルツがバックボードの枠の部分に当てたボールをつかみ、一回転しながら強烈なワンハンドダンクでリムを揺らしたダンクに会場は度肝を抜かれた。当然ながら50点満点を叩き出し、決勝は延長ラウンドに突入した。

ジョーンズJr.は、先ほどのゴードンと同様にバックボードの枠に当ててから得意のレッグスルーワンハンドを決めて50点を獲得。ゴードンも3度目の協力をチャンス・ザ・ラッパーに頼み、ジョーンズJr.と同じレッグスルーワンハンドを成功させて50点をマークし、一歩も譲らない。

そして迎えた運命の延長2本目、ジョーンズJr.はハーフラインから助走し、フリースローラインのやや内側から跳躍。ほぼ『レーンアップ』の状態からウィンドミルダンクを決めたが、9点をあげた審査員が2人いたため、48得点に。

最大のチャンスをもらったゴードンは、ここにきてとんでもないアイディアを披露する。シャキール・オニールの隣で見ていたセルティックスのタッコ・フォール(229cm)を呼ぶと、ボールを持たせて準備。会場中が固唾を飲んだ中、ゴードンが見事に驚愕の人間越えを成功させる。

このパフォーマンスにはNBAコミッショナーのアダム・シルバーも拍手と笑顔で称え、これで優勝は決まったかと思われた。だが、審査員の得点は47で、わずか1点差でジョーンズJr.の優勝が決まった。会場はファンのブーイングに包まれ、ゴードン本人も納得がいかない表情を見せたが、ジョーンズJr.の優勝を称えた。

まさかの『タッコ越え』という案を見せたゴードンだったが、最初はシャックに協力を要請したという。しかし断られてしまったため、「セカンドチョイス」だったというフォールに頼んだと、コンテスト後に語った。「229cm越えのダンクなんて、簡単にやれる代物じゃない。それなのに47点とはね」と、苦笑したが、ゴードンは稀代のエンターテイナーとしてイベントを盛り上げた。

駆り出されたフォールは「すごく怖かった」と、サイズに似合わない可愛らしい感想を語っている。

16年の決勝と同じく延長ラウンドで敗れたゴードンは残念だったが、今年のコンテストは、大掛かりな演出より、それぞれの身体能力を最大限に生かしたダンクが見られるなど、本来あるべき姿のダンクコンテストだった。