田原隆徳

移籍2試合目で好プレーを披露

大阪エヴェッサはシーズン序盤からの好調を維持し、悲願のチャンピオンシップ進出が現実味を帯びてきた。

だが、千葉ジェッツとの初戦に敗れ、今シーズン最長となる3連敗を喫するなど、後半戦に入り失速している。それは主力の伊藤達哉と合田怜、2人のポイントガードがケガで離脱したことが大きく関係している。

こうして薄くなったポイントガードの層を厚くする際に、白羽の矢立ったのが宇都宮ブレックスの田原隆徳だ。そして、期限付移籍が発表された2月12日、田原は大阪のユニフォームを着て琉球ゴールデンキングス戦のコートに立った。

シーズン後半戦に移籍し、チームに即フィットすることは難しい。特に出場機会が少なかった選手であればなおさらだ。それでも田原は、千葉との初戦で今シーズン最長となる18分間のプレータイムを得て、7得点4アシスト1スティールを記録し上々のパフォーマンスを見せた。

当然ながら指揮官の天日謙作も大きな期待を寄せている。「まだ2試合目ですけど、ちゃんとやってくれているのですごい期待しています。今は簡単なことしかやっていませんが、簡単なことだけど誰でもできるわけではない。良いパフォーマンスをしているので、理解を深めてそこからプレーの幅を広げてほしい」

チームが変われば、スタイルもルールももちろん異なる。「ブレックスと大阪のルールが結構違っていて、特にディフェンスが難しいです。天日さんとコミュニケーションを取って、アジャストできるように努力しています」と、田原もその違いに苦労しているようだ。

初戦ではオフェンスリバウンドを多く許し、前半で23点のビハインドを背負った。それでも、後半はディフェンスを修正し、1桁点差に戻す場面もあった。田原も「前半とディフェンスを変えて、後半はアジャストできて良い感じでプレーできました。明日は切り替えて、後半のようなプレーを最初からして、大阪らしさを出していきたい」と、第2戦の必勝を誓った。

田原隆徳

宇都宮での2年を経て「俺、大丈夫だな」

大阪に入団したのも突然のことだったが、ここまで来るまでには紆余曲折あった。札幌大在学中にレバンガ北海道と特別指定選手契約を結び、翌年には本契約を結んだが、プレータイムを勝ち取れずに退団。B2クラブからのオファーはあったが、B1でのプレーを所望し、Bリーグのトライアウトにも参加した。チームが決まらない焦燥感に駆られる中、「拾ってもらった形で入った」と振り返ったように栃木ブレックス(現宇都宮)に入団した。

30試合に出場するも、シーズン途中に双方合意の下、契約解除となった。その後、「吸収できるものがあって、残る価値があった」との理由から、練習生としてチームに帯同した。

そして、今シーズンは再び本契約を勝ち取ったが、テーブス海の加入など、ガード陣の層が厚い宇都宮で自分の立ち位置を確立できない状況で大阪からの話が舞い込んできた。「チャンスが回ってきた」と、その時点で田原に迷いはなかった。

「プレータイムもありますが、自信もついたので。『俺、大丈夫だな』って。自分で言うのもなんですが、練習でもやれていましたし、去年より明らかに成長したと分かったので。あとは試合で出すだけだなって。試合でやらなきゃ意味ないですし、プロとしてプレータイムを求めるのも大事だと思うので」

そして、合流して間もなくまだ2試合だが、これまでの倍以上のプレータイムを与えられ結果を残した。「一歩ずつやってきた自負はあるので、自信を持ってやっていきたい」と田原は言う。

田原隆徳

チャンピオンシップ進出へ、大阪の救世主となれるか

過去の例を見る限り、レンタル移籍した選手が元のチームに戻ることは稀だ。だが、レンタル移籍が発表された際、田原は「ブレックスメンタリティーを出したいと思っています」とのコメントをした。それは田原にとって宇都宮が特別な場所だったからに尽きる。

「チームメートも仲良くさせてもらって、コーチとかとも気が合って。やっぱり思い入れはありますよね。『レンタルだから、一応宇都宮だからね』って、みんなも言ってくれました」

「『良いチャンスだよ』、『頑張っておいで』ってチームメートもコーチ陣も全員が言ってくれて。それがあるので『行ってきます』って感じで」と、本当に良い関係性を構築していたという。

居心地が良い場所から出ることに躊躇することもあるだろう。それでも、田原はプロとしての気概を優先して、感謝しかない宇都宮を離れた。

千葉との初戦に敗れ、大阪は西地区首位の座を琉球ゴールデンキングスに明け渡した。大阪のピンチを救うことができるか、田原の本当の挑戦はこれから始まる。