吉田亜沙美

「自分であって自分でない感覚がありました」

「日本の12番をつけていいのは今の吉田亜沙美ではないです」

ベルギーで行われた東京オリンピック予選の3試合を終え、女子バスケットボール日本代表の吉田亜沙美が、今の自身について総括したのがこの台詞だ。

今大会、日本代表は初戦のスウェーデン戦に快勝したが、東京オリンピックでメダル争いのライバルとなるベルギー、カナダの強豪相手にはいずれも終盤に激しい追い上げを見せるもあと一歩及ばずの惜敗を喫した。

「日本のバスケを40分間、最初から最後まで徹底できていなかったです。そこを東京オリンピックまでにどのメンバーが出ても40分間やりきれるようにしないといけません」

吉田はこのようにチームのパフォーマンスを総括する。そして、吉田個人でいうと今大会は、先発の本橋菜子に続いて登場する2番手のポイントガードという位置付けだった。

初戦のスウェーデン戦は9分出場で0得点3リバウンド4ターンオーバーとインパクトを残せず。「あなた誰ですか? と思ってしまうほど、自分であって自分でない感覚がありました」と、本人が苦笑いする出来だった。

しかし、続くベルギー戦では15分出場で4リバウンド7アシスト0ターンオーバーと、得点こそなかったが持ち味である手堅いディフェンスに加え、的確なパスで味方の得点を演出した。

最終戦のカナダ戦では、ここまでの2試合でシュートを打っておらず相手がパスを警戒していると察知し、積極的にアタック。12分出場で8得点2アシスト1スティール1ターンオーバーを記録した。

スウェーデン戦の後の2試合については、見事に立て直ししたイメージもあるが「最低ラインを超えた自分のパフォーマンスができましたが、満足も納得もしていない。今の自分の現状をしっかり受け止めないといけないです。ベンチに長く座っているのは、トム(ホーバス)から長く使えるという信頼がないから。そこをどう勝ち取るのかは自分次第です」と現実を冷静に受け止めている。

吉田亜沙美

「どういう旅にしていくかは自分たち次第」

ただ、オリンピック前に世界の壁を体感できたこと自体が「アジアでは味わえない悔しさがあって良い経験になりました」と表現する収穫だった。そして、ベルギー戦、カナダ戦でも劣勢から追い上げたことに確かな手応えを感じる。

「このメンバーで一緒に戦えたことは楽しかったし、うれしかったです。ベルギー戦も負けている中で、あと少しで追いつける状況を作れました。日本のあきらめない姿勢を見せられたのは良かったです。ただ、これから勝ち切れる強さを見に付けないと、東京オリンピックでの金メダルは難しいです。そこは私自身も成長していきたい」

だからこそ3試合の結果は1勝2敗と負け越しだったが、吉田はこれも日本代表が成長していくための貴重な経験だったとポシティブにとらえている。

「みんな前しか向いていないです。トムがよく言っていますが、今の私たちはまだ旅の途中で、金メダルをとることが到達点です。どういう旅にしていくかは自分たち次第です」