バスケ男子日本代表を率いるフリオ・ラマス、『日本のスタイルを作る』という挑戦

2017/11/23
日本代表
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文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、FIBA.com 取材協力=スポナビライブ

いよいよ24日からワールドカップ予選が始まる。男子日本代表は昨年秋に体制を一新し、ここから始まる一連の戦いに向けた準備を進めてきた。数多くの選手を代表に呼んでセレクションし、これまでにない頻度で強化合宿を行い、国際大会を経験してきた。もちろん、『日常』であるBリーグが個々の選手の切磋琢磨のレベルを上げ、その能力を高めてもいる。

昨年7月のOQT(リオ五輪の世界最終予選)と比較すると、富樫勇樹とアイラ・ブラウン、馬場雄大といった選手が新たなチームの軸として代表に定着。最高の準備をして『本番』に臨む。

そんなAKATSUKI FIVEを率いるのはフリオ・ラマス。サン・ロレンソを率いてアルゼンチンリーグを制した直後に日本代表ヘッドコーチに就任し、目指すべきスタイルを模索しながら、チーム強化に注力してきた。そんな指揮官に日本代表と彼自身について語ってもらった。

「できる限り団結力を高め、良いムードを作る」

──まずはラマスコーチのことを聞かせてください。現役時代、そして指導者になった経緯はどんなものでしたか。

私は自分の街の小さなクラブでバスケを始めました。9歳から19歳まですべてのディビジョンでプレーしながら、15歳の頃には下部組織の子供たちの指導もやっていました。選手としてはセグンダ(2部リーグ)でプレーしただけで、それほど才能があったわけではありません。20歳でU16やU20の選手たちを教えるコーチになると、次のシーズンにはそれまで自分のチームメートだった選手たちのコーチをやることになりました。

同じ時期にレオン・ナフルデからアシスタントコーチとして招かれました。レオンはアルゼンチンのプロリーグ設立の立役者であり、名将でもあります。彼のアシスタントを3年やって、彼が別のクラブに行く際に私がヘッドコーチになったのです。まだ24歳でした。デビューして29年になりますが、アルゼンチンのディビジョン1でやったりヨーロッパでやったり、そして今回こうやって日本にやって来たわけです。

最初に指導者を選択したのは、まだ若かったので勢いでした。選手としての限界を少しずつ理解するとともに、愛するバスケにプロとしてどうかかわっていくのかを考えました。指導者としてチームに貢献できるのであればやろうと、この道を選んだのです。もともと、人とかかわって仕事をするのも好きでしたしね。

レオンは偉大なコーチでした。自分の持っているすべての知識を教え、私の進むべき道を照らしてくれました。私はそれで指導者としてやっていく気持ちを固めたのです。

──ヘッドコーチにもいろんなタイプがいますが、ラマスコーチは何を重視するタイプですか?

チームのために選手の一番良いところを引き出す。できる限り団結力を高め、良いムードを作る。何か成功するには、これが最初のステップになります。それができたら次に、選手が一つひとつの行動を起こす決心を持ち、責任を持ってアクションできるようにします。そしてフィジカルでもテクニカルでもすべての練習で常に成長できるよう私が『感染』させます。選手たちが強い気持ちを持って、チームとして目標に向かうように導く。私はそんなコーチです。

「日本代表を成長させるためのプロジェクトに感心した」

──日本代表からヘッドコーチ就任を打診された時は、どのような受け止め方をしたのですか。

もちろん驚きましたよ。技術委員長の東野(智弥)さんが送ってくれたビデオを見たのですが、すぐに答える決心はできませんでした。その後に、私のチームがNBAのチームと対戦するために滞在していたトロントに東野さんがやって来たんです。そこで日本のプロジェクトを説明され、引き受けることにしました。

──自分の国の強豪チームを率いていて、後にはリーグ優勝に至ります。そんなラマスコーチが日本についての情報があまりない中で、どこに魅力を感じて決心したのでしょうか。

私は日本に来たこともありませんでした。それでも、日本代表を成長させるためのプロジェクトに感心したし、それが自分の成長にもなると思いました。それが引き受けた理由です。私のモチベーションは、常にチャレンジすることなんです。日本からのオファーは、指にちょうどぴったりはまる指輪のようなものでした。日本代表と私はアイデンティティを一つにしていると思います。もし過去に戻ったとしても、もう一度日本に行くという決断をしますよ。私の夢は日本代表を率いて2020年のオリンピックに出場することなんです。

──ラマスコーチに求められるのは、ただチームを指導して試合に勝つだけでなく、『日本のスタイルを作る』ことも大きいですよね。現時点で見えている『日本のスタイル』はどんなものですか?

今はまだ取り組んでいる段階ですが、ディフェンスブロックを形成してアグレッシブな守備をすること、リバウンドは5人で取りに行くこと。日本代表には高さがあるわけではないので、リバウンドはチームで取りに行く、全員で解決する意識が必要です。オフェンスでは日本人特有のインテリジェンスを生かすこと、ゲームを読んでベストの選択をすること、すべてのポジションで決められたオフェンスを正確に実行することです。できるだけベストなプレーを選択し、シュートチャンスを作る。これが今の時点で取り組んでいることです。

平均身長を上げる必要があるし、フィジカルも改善しないといけません。ですが、戦術面の理解度は高く、Bリーグでもすごく良いオフェンスシステムを持っています。これは私から見ても一流のレベルです。もう一つ求めるとしたらレベルの高い海外のチームと競争することです。

「ファンの方々が日本代表を誇りに思えるようにしたい」

──ところで、日本での暮らしを数カ月経験してみて、居心地はいかがですか?

私が知っている街の中でも東京はベストだと言えます。安全だし綺麗だしモダン、近未来的な街ですね。人もフレンドリーだし、リスペクトできる人がたくさんいます。1月にアルゼンチンに帰りますが、戻って来る時には家族も連れてくるつもりです。私がこの数カ月で感じたポジティブな印象を家族も共有できるといいですね。

──お気に入りの場所はできましたか?

東京はあちこち行きましたが、まだはっきりとお気に入りと呼べるところはありません。プライベートでは銀座を散歩したりしますよ。京都や大阪にも行きましたが、36時間で2試合を見たこともあって、プライベートで観光するわけにはいきませんでした。ただ、少しの時間でしたが京都はすごく気に入ったので、次は家族と一緒に行きたいですね。これからは日本全国を回りたいと思っています。

──それでは、いよいよ始まるワールドカップ予選に向けた抱負をお願いします。

2019年に中国で行われるワールドカップに出場するという強い思いを持って戦います。今回はこのグループで3チームしか次のラウンドに通過できないので、2次予選に進むことが第一目標です。まずは2017年を締めるために良い試合をすること。そして来年の2次予選に向かって頑張ろうと思っています。

──日本のファンに求めたいことはありますか?

私から特にファンに求めることはありません。逆に私たちがファンに何かを与えたいと思っています。全力を出して、ファンの方々が日本代表を誇りに思えるようにしたい。そのためにはまだまだやらないといけないことがたくさんあります。だから頑張りますよ。