「今はまだ実力がないことは理解しています」
1月27日、川崎ブレイブサンダースは特別指定選手で法政大学3年の水野幹太の加入を発表した。U19ワールドカップ2017にも出場するなどアンダー世代での日本代表経験もある司令塔の水野は福島南高校3年時、法政大1年時にも地元のB2福島ファイヤーボンズで特別指定としてプレー。特に初年度の2016-17シーズンにおいては12試合出場で平均15分30秒出場、5.3得点と爪痕を残している。
川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは、水野への期待をこう語る。「昨シーズンも練習生として来ていたので、彼の特徴は分かっています。センスに加え、ポイントガードとしてサイズもあります。また、アンダー世代で世界大会に出場し、すでにBリーグでプレーしたこともあり経験値も高い。これから一緒に練習をやりながら成長してもらいたいです」
そして水野本人は、川崎からオファーを受けたときの気持ちを「すごくうれしかったです。しかし川崎は今、リーグで一番強いチームだと思っているので、そこに入って自分の力が足りないのではないかと不安な部分もありました」と率直に明かす。
また、練習生から特別指定となったことには、「練習からたくさんのことを学べますが、練習生では試合には出られない。それが今回は、チームに帯同できるので全く違います」と大きな前進ととらえる。そして「今は、まだその実力がないことは理解しています」と語る一方で、「試合に出ないと満足できない部分もあります」と貪欲な姿勢を見せている。
「自分の個性をプラスして練習でアピールできれば」
川崎のポイントガードといえば今は戦線離脱中だが篠山竜青、藤井祐眞と実力者がおり、さらに篠山の離脱で起用されている辻直人も活躍し、リーグNo.1の層の厚さを誇る。『試合に出てこそ成長できる』という考えもあり、そうなると川崎は最もハードルが高いチームと言える。
それでも水野が川崎を選んだ理由は、自分が最も成長できる環境であると考えるからだ。「今、篠山さんはケガをしていますが、祐眞さん、辻さんは得点も取れるし、アシストもできる。それぞれが他にない個性を持っていて、そういうところを見習いたいです。そこに自分の個性をプラスして練習でアピールできれば、試合に出られると思っています」
水野が試合出場を勝ち取るためには、冒頭で触れた不安を払拭することが第一だ。「まだシステムに慣れていないです。フォーメーションなどでミスするとチームが崩れます。そういうところで遠慮はちょっとあります」と、水野の不安は練習を重ねることで解決できることだ。
そこさえしっかり理解できれば、勝負の時間となる。「あとはやるだけ。練習からしっかりアピールしてやろうという気持ちです。自分は川崎のポイントガードの中では、一番サイズがあります。スピードもないわけではない。先輩たちとは違ったプレースタイルを見せていきたいです」
「よりコートに立ちたいという気持ちになりました」
水野が在学している法政大学バスケットボール部の練習場の最寄り駅は、川崎の本拠地とどろきアリーナと同じで、「これまで観客として何回か試合を見に来たことはあります」と馴染みはある。
それでも4500人近い観客の視線が集まるコートに立つのは当然ながら観客席からとは別物の高揚感がある。実際、ベンチから初めてホームゲームを体感したことで、モチベーションはさらに高まった。「ああいう空気の中でプレーするのは一番楽しいと思います。よりコートに立ちたいという気持ちになりました」
「辻さん、祐眞さんのプレータイムが長いので、自分が少しでも2人を休ませられるようになりたい」と水野は、今シーズンにおける目標を語る。それが成し遂げられた時、川崎にとっても大きなステップアップになる。