A東京の堅守をかいくぐり19得点
前節、富山グラウジーズは粘りのバスケットを展開するも、アルバルク東京に連敗を喫した。
第2戦では最大15点のビハインドを背負ったが、何度か1ポゼッション差に迫った。チームのリーディングスコアラーであるレオ・ライオンズを欠きながらも王者を追い詰めることができたのは、若きスコアラー前田悟の活躍が大きい。
前田は13点ビハインドでスタートした第3クォーターに、3本の3ポイントシュートを含む11得点の荒稼ぎを見せ劣勢のチームを救った。
A東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチも「彼のシュートが決まる形は富山の勝ちパターン」と前田を警戒していたことを明かす。実際、A東京は前田をフェイスガードで守り、スイッチしてマークマンを受け渡しするなど、前田を徹底的にマークした。
前半で4得点を挙げたものの、得意の3ポイントシュートは2本放って成功なし。第1戦ではわずか2得点とA東京の堅守に封じられていた。前田は「菊地(祥平)さんだったり、須田(侑太郎)さんはフィジカルも強いし、ずっとへばりつかれていたので体力的にもキツイ部分はありました。身体の寄せ方も上手だし、全然違う」と、リーグ最強の守備力を身をもって体験した。
それでも、「3クォーター1発目の3ポイントが入って、そこから勢いに乗れた」と言うように、前田はこの1本をきっかけに本来のプレーを取り戻してチームを勢いづかせた。
「『そんな壁、薄っぺらいよ』と言われて」
ルカコーチが「オフェンスの終わり方が悪く、その後のトランジションディフェンスも悪かった」と言うように、前田の突然の爆発はディフェンスがもたらした産物だったことは間違いない。だが、それだけではなく、チームメートのアドバイスや助けがあったことも起因する。
ここまで32試合を終えた時点で、前田は日本人選手チームトップの平均11.2得点を記録している。それでも、「0得点は今シーズン始まってから初めてだったので。なかなか自分のタイミングでシュートを打てないし、なんなんだろうって悩みました」と、直近の2試合合計で2得点に終わり頭を抱えていた。そこで、チームメートから数々の言葉をかけられたという。
「周りからも肘が伸び切っていないとか、もっとシュートを打ち切れと言われました。アイク(アイザック・バッツ)と一緒に映像を見て、『ここでちょっと待って俺をスクリーンで使え』と教えてくれました。それを少し実践できました」
「初めて壁にぶつかりましたが、宇都(直輝)さんとご飯に行って、『そんな壁、薄っぺらいよ』と言われて、『明日やってやります』って言いました」
こうしたやりとりが絡み合い、初めてのスランプを乗り越え、素晴らしいパフォーマンスに繋がった。
チームの中心選手としての自覚
前田は昨シーズン途中に特別指定選手として富山に入団し、今シーズンからプロ契約を結んだルーキーだ。最初の7試合はベンチスタートだったが、それ以降は先発に定着。今となっては富山の欠かせない戦力となり、新人王候補の一人に挙げられる。
「ルーキーとか関係なくスタートで出してもらっているので、責任感を持ってプレーしなきゃいけないです。コーチからもお前の得点は必要だと言われているので、自覚を持って積極的にプレーしたいです」と、前田も自分の立ち位置を理解している。
ライオンズのケガがどこまで長引くかはわからない。だが、どんな状況であれ、前田に懸かる期待はこれからも増していくだろう。初めての壁をすぐに乗り越え、「自分にプレッシャーはかけない」という前田なら、気負わずにチームをより高みへと導く存在となれるはずだ。
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