全力のプレッシャーディフェンスを貫いて勝利
天皇杯ファイナルはサンロッカーズ渋谷と川崎ブレイブサンダースの激突となった。
立ち上がりにペースをつかんだのは川崎。前日に続いてポイントガードとして先発した辻直人がSR渋谷のプレッシャーをかわして攻撃をクリエイトし、ニック・ファジーカスが得点を重ねていく。それでもSR渋谷は目まぐるしく選手を入れ替えつつ、全力のプレッシャーディフェンスを遂行。辻にボールを入れさせないことで、本職のポイントガードが不在の川崎のリズムを乱し、プレスの圧力と運動量で強引に流れを呼び込んだ。
このSR渋谷の圧力にパスが回せなくなった川崎は、オフェンスの停滞がディフェンスにも響いて苦しくなる。第2クォーター開始2分半、ライアン・ケリーがゴール下の得点を狙う場面でシュートフェイクに引っかかったファジーカスのブロックショットがアンスポーツマンライクファウルを取られる。その直後にはケリーにスティールからの速攻を決められ、セバスチャン・サイズも連続得点を決めて28-19とSR渋谷が抜け出した。
このまま一気にSR渋谷のペースになってもおかしくなかったが、川崎に唯一残った本職のポイントガード、青木保憲がチームを踏み留まらせる。ルーズボールに飛び込んで繋いだポゼッションから、ジョーダン・ヒースの連続得点を立て続けにアシスト。SR渋谷ディフェンスの警戒は辻に集中していたにせよ、若い青木がハッスルしてチャンスを作り出すことで、川崎は立ち直った。ボール運びをその青木に任せた辻がスコアラーへと変貌し、ピック&ロールからのアタックで自ら得点を奪い、ノールックパスでファジーカスのイージーシュートを演出。ファジーカスも冷静さを取り戻して3ポイントシュートを沈めて逆転に成功。35-35で前半を終えた。
後半に入るとSR渋谷がオールコートプレスで川崎を締め付け、3ポイントラインの外でファウルを誘う辻、セカンドチャンスからバスケット・カウントをもぎ取るヒースの奮闘に押し返されながらも、59-55で最終クォーターへ。
満身創痍の川崎、奮闘及ばずタイトルを逃す
一進一退の攻防が続く中、激しくプレッシャーをかける川崎に対してうまくファウルを誘いつつリズムを作った川崎がビハインドを詰め、辻の3ポイントシュートで追い付き、ヒースの3ポイントシュートで逆転に成功する。ファジーカスとヒースはフル出場が続いており、長谷川は第3クォーターで足首を痛めて満足に走れない状況ながら、残り3分半で69-68とした。
しかし、SR渋谷もここで崩れずに押し返す。石井講祐の3ポイントシュート、ピック&ロールから抜け出したサイズのジャンプシュートで再び逆転。その後も1ポゼッション差の攻防が続いたが、SR渋谷が1点リードして迎えた残り30秒、ケリーに対してブロックに行ったヒースにアンスポーツマンライクファウルがコールされたことで、SR渋谷が優位に立った。最後まで粘る川崎を振り切り、最後のファウルゲームも乗り切ったSR渋谷が最終スコア78-73で勝利。5年ぶり2回目の天皇杯制覇を果たした。
ベンドラメ礼生は13得点という数字以上に、攻守に積極的に走る姿勢でチームを引っ張り優勝に貢献。大会MVPにも輝いた。「40分間ディフェンスで戦って全員バスケができた。今シーズンの僕たちのバスケはディフェンスで相手を嫌がらせること。それを天皇杯決勝で表現できたのはすごく良かった。天皇杯を優勝したチームとしてBリーグも戦って、優勝できるように頑張りたい」と喜びを語る。
川崎は満身創痍でも最後の1秒まで戦い抜いたが、SR渋谷が仕掛けたハイエナジーのバスケットがボディブローのように効いていた。チームの顔であるファジーカスと辻が終盤に託された3ポイントシュートを決められず、最後に力尽きた。
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