「ウチにはどこか相手にとって付け入る隙がある」
10月25日、ミッドウィーク開催のレバンガ北海道との試合。千葉ジェッツは前半で大量リードを奪うパフォーマンスを見せて危なげなく勝利し、通算成績を7勝2敗とした。
千葉はBリーグ初年度の昨シーズンに旋風を巻き起こしたチームを継続させている。選手に大きな入れ替わりはなく、プレースタイルも変えずに昨シーズンからの積み上げがなされており、シーズンの立ち上がりとしては上々のスタートを切ったと言える。
ただ、懸念されるのは『ブラックアウト』だ。昨シーズンは1月の天皇杯優勝を機にステップアップし、リーグに旋風を巻き起こしたが、チャンピオンシップでは栃木ブレックス相手に突如として電源が切れたかのように推進力を失った。その課題は今シーズンにも出ている。2敗を喫した相手は京都ハンナリーズと大阪エヴェッサ。どちらも相手が良いプレーをしたのもあるが、それ以上に千葉の『スイッチ』がオフになっていた結果の敗戦だ。
逆に言えば、昨日の北海道戦のように『スイッチ』が入っていて、つまり正しい意識を持って試合に臨むことができれば、今の千葉はそう簡単に負けない。キャプテンの小野龍猛はこの『スイッチ』について「やっぱり気持ちですね。試合の入りで、自分たちが圧倒してやるんだと思うことです」と説明する。
「別に相手をナメてかかるわけじゃないんですけど、ウチにはどこか相手にとって付け入る隙があるんだと思います。その隙がなければウチは強いです。でもどこかに隙が、リバウンドに行かないとかコミュニケーション不足とか、そういう隙がまだまだたくさんあると僕は感じています。今日に関しては、今シーズンの北海道はすごく良いチームで、ウチも身構えました。どこのチームが相手でも身構えるんですけど、同地区のライバルを相手に絶対勝ってやろうという気持ちがありました」
「ゲームへの集中力を毎回ピークに持っていけるか」
この試合はうまく行った。だが、今後も必ずうまく行くとは限らないのが難しいところ。レギュラーシーズンはこのままでも上位をキープできるだろう。ただ、チャンピオンシップのような勝負どころで突然『スイッチ』が切れてしまうのではタイトル獲得はおぼつかない。長いシーズンを戦いながら、その『スイッチ』を自分たちでコントロールできるようになる必要がある。
「ゲームへの集中力を毎回ピークに持っていけるか。やっぱり難しいところはあります。リーグ戦だと特にそうです」と小野は正直に明かす。
「まさにその『スイッチ』のコントロールで、チャンピオンシップになった時、僕たちがどこまでできるようになっているか。リーグでの成長を踏まえて、それを出せるのが一番良いんですけど、昨シーズンはそれができませんでした。その点、昨シーズンから残っているメンバーはその悔しさを覚えていて、その『スイッチ』について危機感を持っています」
「昨シーズンからの積み上げはできていると思います。ここまで7勝2敗、もったいない負けがあるのはウチの弱さですが、それも良い材料だと受け止めています。負けて悔しがって終わりじゃなくて、もう負けないチームにならないと。強豪になったと言われますが、まだまだ成長できます。言い方は悪いかもしれないですけど、下位のチームには負けてられないと思うので。そこで負けている間は強豪とは言えないです」
「落ち着いて状況を見て判断できるのが僕の良いところ」
それでも、敗戦がチームへの良い刺激となり、北海道戦の素晴らしいパフォーマンスにつながった。その点では小野も手応えを得ている。「ウチが良い状態にあるので、どのチームも『千葉を倒す』と向かってきます。僕たちはチャンピオンを目指していて、それを跳ねのける力が必要ですし、それで一試合一試合緊張感を持って戦えるのは良いことです」
北海道との試合、特に立ち上がりでは人もボールも動くスピードで相手を圧倒した。エナジーに満ちたディフェンスと流れるようなオフェンス、チームの目指すバスケがよく表現されていた。「外国籍選手も走れるようになり、誰か一人がボールを保持している時間が減って、ボールの展開がすごく速くなったと思います。ディフェンスでもリバウンドが取れています」と、昨シーズンからさらに『走れるようになった』チームのレベルアップを小野は実感している。
小野自身のプレーに注目すると、ボールの展開が速くなった代わりに彼の武器の一つであるポストアップが減っているように見えるが、「今は様子を見ながらやっているんです。もちろん相手も対策してくるので」と頬を緩めた。まだ開けていないプレーの引き出しがあるよ、ということだろう。「自分で得点するのもやりますが、相手が寄ってきたらパスを出すのが僕の仕事。落ち着いて状況を見て判断できるのが僕の良いところだと思っているので、それでチームメートの手助けをしたいと思っています」
日本代表の活動もあり、シーズン序盤にもかかわらず超過密スケジュールとなっている。身体の疲労はもちろん、精神的にも大変に違いない。こちらもうまく『スイッチ』をコントロールする必要がある。「正直に言えばしんどいですよ」と苦い表情をチラリと見せながらも小野は言う。「でも、これに慣れなきゃいけないですから。しっかりとセルフコントロールしながら、もちろん前向きに。当たり前にやらなきゃいけないことだと思っています」
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