文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「最後に強気で行くというのは大事」の言葉どおりに

安藤誓哉の躍進が止まらない。栃木ブレックスとの第2戦、接戦に終止符を打ったのは安藤の2本のシュートだった。

1本目は最終クォーター残り51秒の場面、ライアン・ロシターに4点差と迫られるゴールを許した直後のプレーだった。ピック&ロールでマークにつくセドリック・ボーズマンがスクリーナーに意識が向いた瞬間を突き、リングへアタック。ロシターのシュートブロックの上をいくフローター気味のレイアップを沈めた。

2本目は遠藤祐亮に3ポイントシュートを決められ、1ポゼッション差に迫られた直後のプレー。ショットクロックをギリギリまで使い、田臥勇太の眼前で3ポイントシュートを沈めた。直前にドライビングレイアップを沈めたことで、3ポイントシュートのケアがやや甘くなっていた。

残り19秒で6点差、追い上げムードが最高潮に高まる中、熱狂的ブースターを黙らす一発でA東京が接戦をモノにした。安藤は「もちろんキックアウトとか選択肢はいろいろあったんですけど、最後に強気で行くというのは大事だと思っていたので、強気でフィニッシュしました」と終盤に決めたビッグショットを振り返った。

指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチは「本当にビッグなプレーを決めてくれました」と安藤の働きを称賛。A東京には強力インサイド陣や田中大貴など、勝負どころで試合を決められる人材が揃っている。その中で安藤のピック&ロールのプレーを選択したということは、それだけルカコーチが安藤を信頼しているということだ。

「いつでも『ready』しておかないと、というのは言われているので」と安藤は笑顔をのぞかせた。

『日本を代表するポイントガード』であることの証明

試合を決定づけた3ポイントシュートは『第2の矢』だったと振り返る。「最後のプルアップスリーのところはピック&ロールで崩せなかったので。コーチもあそこは1on1でクリエイトするのがポイントカードっていうスタイルなので、しっかり決まったので結果的に良かったです」

ルカコーチが求めるポイントガードの要件は、まずはピック&ロールでチャンスを作り出すクリエイト能力を持つこと。それがうまく行かなかった場合に1on1で仕掛けられるスキルと積極性を持つことだ。安藤は言う「一つのピック&ロールを完璧にクリエイトするというのは、どのレベルになっても追求し続けなければいけないことです。とにかく今はピック&ロールのクリエイトを一番の課題にしています」

ルカコーチがコートのサイドラインギリギリまで飛び出し、チームスタッフに制止される画は最早名物となりつつある。昨日の試合でも安藤だけでなく、選手たちに大きな声で指示を送っていた。安藤は言う。「周りから見ると怒っているように見えますけどコーチの中では普通なので(笑)。基本的に指示をする中でボルテージが上がって言うだけなんです。『こっちの方がいいよ』って」

安藤の活躍もあり、A東京は7勝1敗で現在リーグ首位に立っている。そして次節は、昨シーズンのチャンピオンシップセミファイナルで煮え湯を飲まされた、川崎ブレイブサンダースとの対戦が待ち受ける。安藤も「相手は代表の顔のポイントカードなので、気持ちをしっかり入れなおして水曜日に臨みたいと思います」と気合は十分。

名前こそ挙げなかったが、篠山竜青を意識しているのは明らかだ。日本を代表するポイントガードになるには、そして日本代表の最終候補12名に入るには、篠山よりも優れていることをコート上で実証しなければならない。『日本を代表するポイントガード』である田臥勇太の前で決勝シュートを沈めた安藤。今度は篠山を相手にどんなパフォーマンスを見せるのかに注目だ。