スペンサー・ディンウィディー

キャッチ&シュートが増えてディフェンスも強力に

若手中心でプレーオフに進んだ昨シーズンを経て、オフにはカイリー・アービングとケビン・デュラントを補強して大躍進が期待されたネッツ。開幕から4勝7敗の低調なスタートを切ると、もともと今シーズンはプレーできない想定だったデュラントだけでなく、アービングと3年目のカリス・ラベートもケガで離脱してしまいました。

チームのサラリー総額の半分以上を稼ぐスター2人と、既に契約済みの来シーズンからのサラリーがチーム3位となる若手有望株というトップ3を欠いての戦いは想定外のものです。

しかし、そこからネッツは12勝8敗と息を吹き返し、勝率5割を超えてきました。スターターになってから平均25.6点、7.2アシストのスペンサー・ディンウィディーに牽引されたネッツは、ガードの選手層が薄いことに悩まされながらも、チームとしての強さを発揮しています。

好調のディンウィディーですが、3ポイントシュート成功率は30%を下回っており、アービングと比べて優れているとは言い難い一面もあります。基本的には強気な3ポイントシュートとドライブでオフェンスを作り上げる点でアービングと似ていますが、オフェンスリーダーとして全員にパスを供給し、自らもオフボールで動き回ってシュートチャンスを生み出し、タフショットでも躊躇わず決めていくメンタルの強さは「自分たちの戦い方はこれだ」と意思統一をもたらすことで、チームから迷いを取り除きました。

ディンウィディーがスターターになって以降のネッツは、1試合のパス本数が平均30本近く増えています。結果、パスをもらってのキャッチ&シュートが3本以上増え、全員がオフェンスに絡むようになりました。この変化はポイントガードの交代以上に、アービングとラベートというドライブを得意とする選手を2人並べていた状況から、オフボールで動き回るシューターのジョー・ハリスのように、3ポイントシュートを中心にバランスの良いプレーをするウイングが軸になったことが大きく、その好調さを維持するようにディンウィディーをベンチで休ませる時間帯にはポイントガードを置かず、ウイングを多く並べるようになってきました。

その結果、サイズがあってオールラウンドに守れる選手たちの組み合わせは、オフェンス面で困っても強力なディフェンスブロックを形成するようになり、ディフェンス力で粘り強く戦うチームに変化してきたのです。アービングの離脱以降、得点が9.8点減りながらも、失点が13.1点も減りました。ディンウィディーのシュートがそこまで決まっていなくても勝率が大きく上がった理由は、チーム全体のディフェンス力向上にあります。

大物フリーエージェントの獲得が注目を集めましたが、その一方でウイングの補強も進めていました。トーリアン・プリンス、ギャレット・テンプル、ウィルソン・チャンドラー、デイビッド・ヌワバ、ティモティ・ルワウ・キャバローといったポジションを問わずディフェンスでも貢献できる選手を集めたことが、主力にケガ人が続出した状況で効果を発揮してきました。

開幕当初は新加入選手が多い中で連携面に課題がありましたが、今ではベンチから出てくる選手が次々に活躍する昨シーズンまでの状況の再現となってきています。

ケガの功名のような形でチーム全体が整備されてきましたが、逆にエースとチームメートの融合は進んでいません。今のチーム状況は良くても、プレーオフで勝つための変化は成果が出ているとは言い難い状況です。後半戦に向けて、どのようにしてチーム力を向上させていくのかがネッツの課題になります。