文・写真=鈴木栄一

サイズ不足の弱点をカバーする『補強』マッカーサー

2017年、日本バスケットボール界において一際素晴らしい活躍を見せているのは女子代表だ。A代表がアジアカップを制覇、ユニバシアードでは銀メダル、U19ワールドカップでは4位と各年代で好成績を残している。今年、最後の代表チームとして国際舞台に登場するのがU16代表で、22日からインドで開催されるアジア選手権に出場する。

チームを率いるのは今夏にU19を率いていた萩原美樹子ヘッドコーチだ。「日本のチームは常に大きくないですが、その中でも特に大きくないチームです。ドライブを起点にした攻撃でボールをシェアする。ピックプレーをかしこく使ってドライブからキックアウトをしてシュート放つなど、平面のバスケットボールをしていきたい」とチームの特徴を語る。

このようにサイズ不足のチームにあって大きな戦力補強となったのが、9月下旬の第4次強化合宿から合流したマヤ・ソフィア・マッカーサーだ。父はかつてアイシン(現シーホース三河)で活躍し、2000年代前半における数々のタイトル獲得に貢献したエリック・マッカーサーで、日本人の母親との間に生まれたマヤには萩原ヘットコーチも大きな期待を寄せている。

「マヤが入ってリバウンドが圧倒的に強くなりました。オフェンスリバウンドにも入ってくれます。そしてガードがドライブし、相手のディフェンスを引きつけてパスをさばくプレーにうまく合わせてのフィッシュなど、プレーの判断は非常に良いので期待しています。また、頭が良いので、合流したばかりですがチームにうまく合わせてくれています」

「今はナーバスとエキサイティングの両方の気持ち」

現在、アメリカ在住のマッカーサーは、「代表に呼ばれたことはびっくりしたし、とにかくうれしかったです。大会に向けて今はナーバスとエキサイティングの両方の気持ちですが、日本代表としてプレーできることは楽しみです」と語っている。自身の役割については、「とにかくリバウンドを頑張ります。ボールを持ったらまずはシュートを狙いにいって、その後でパス。シュートファーストの姿勢で強いプレーをしていきたいです」と続ける。

チームのスタイルとして萩原コーチは、「先発の5人が突出しているチームではありません。10人くらい使っても力は落ちないので、多くのメンバーを使うことでフィジカル、スタミナでも優位に立ちたい」と、文字通りチーム一丸で日本の目指す速いバスケットボールを展開していく。

大会に向けて鍵となるのは、いかに各選手たちが主体性を持って戦っていけるか。世代的に高校1年生、2年生のチームということで「チームに帰れば上級生についていけばいい。自分たちで主体性をもってチームをリードしていくというメンタルにはあまりならない」と萩原コーチは指摘する。

だからこそ、指揮官は「この部分については大会を通じて伸ばしていく。実際、向こうにいっていろいろなチームの試合を見て同世代、年下でもすごい選手がいることを目の当たりにすることで『このままではいけない』と、刺激を受けてもらいたいですね」と語る。

「大会を通じてチームが一つになっていく経験を」

また、この時期、日本の高校バスケットボール界といえば、ウインターカップ予選が各地で開催されている。そんな中での大会参加にあって、萩原ヘッドコーチはチーム編成おける周囲の様々な協力には本当に感謝している。「ウインターカップがありながら、各校の皆さんは快く選手を出してくださりました。そして、JBAからお願いすることでウインターカップ予選の開催をずらしてくださった県協会もあります。皆さんのご協力で良い選手が集まったのを意気に感じて、良い結果を残したいです」

そして最後に萩原ヘッドコーチは「国際ゲームそのものが初めてで、インドといういつもと違う環境の中でもタフに自分のプレーをすることを学んでいく。大会を通じて、チームが一つになっていく経験ができたらいいなと思います」と意気込みを語ってくれた。

過去4度の大会で、日本代表は優勝1回、2位3回と常に決勝に進出している。しかし、平均身長で171.5cmは、参加8チームの中で5番目。一方、中国は199cmを筆頭に190cm以上が3人、オーストラリアも195cm、192cm、187cmの選手がおり、両国とも平均身長で180cmオーバーと、冒頭でも触れたが高さでの苦戦は免れない。しかし、日本の特徴である速いバスケットボールで相手を翻弄し、再び国際舞台で輝きを放ってくれると信じたい。