「痛みに負けたくない。出し切らないと終われない」
シード校の大阪桐蔭(大阪)は大会2日目に県立広島皆実(広島)と対戦。序盤からディフェンスが機能して広島皆実に形を作らせず、前半を37-20とリードして折り返した。
ここまでは死角がないように見えたが、後半開始3分にアクシデントが起こる。ポイントガードの祢宜菜々葉がドライブを仕掛け、スピンムーブでディフェンスを振り切ろうとした際に接触がないまま倒れ込んだ。立ち上がりはしたものの、満足に歩けない状態。本人によれば「ターンでかわそうとした時に右足のアキレス腱を痛めた」とのこと。
この時点で41-26とリードしていたが、司令塔でありキャプテンの祢宜を欠いて影響がないはずはない。ここからボールへの執着心をむき出しにする広島皆実の勢いに押されて、10点差まで詰め寄られて最終クォーターを迎えた。
ベンチに下がった祢宜は痛みと不甲斐なさで涙を流していたが、そこからチーム一丸となって踏ん張ろうとする仲間たちに勇気づけられた。「同期も後輩も信頼しているので心配はしませんでした。逆に、このまま終われないという気持ちが出てきました」と語る。
「チームが一つになれたから勝てました」
第4クォーター残り3分半、66-49と再びリードを広げた場面で祢宜は、自分が不在の間にゲームメークを担った後輩の松川侑里香に代わり、コートに戻って来る。足を引きずる祢宜の投入を、森田久鶴コーチは「本人がやれると言ったので、明日以降に本当にプレーできるか確かめる意味で使いました」と説明する。
もはや勝敗は決していたが、県立広島皆実も最後まで死力を尽くしてプレーする。そんな中、祢宜は明らかに足を気にしながらも、ディフェンスに走り、リバウンドを取り、パスをさばいて果敢に前に出てのジャンプシュートも放った。残り1分を切ってベンチに戻った祢宜は、味方の好プレーに立ち上がって喜ぶこともできなかったが、声は出し続けてチームを盛り立てた。
最終スコア81-56で大阪桐蔭が勝利。試合を終えた祢宜は「今もめっちゃ痛いです」と言うが、その表情はベンチで泣いていた時とは違って晴れやかだった。「痛みに負けたくないです。私はこれで最後なので、やりきりたいです。全部出し切らないと終われないので、明日もできる限りのプレーをして、完全燃焼して帰ります」
森田コーチとスタッフにとっては、頭を悩ませる午後になりそうだが、もう心を決めた祢宜は、「チームが一つになれたから勝てました。チームにとっては良かったです」と笑みを見せ、足を引きずりながらロッカールームへと引き上げた。
明日の3回戦で、大阪桐蔭は県立津幡(石川)と対戦する。