オン・ザ・コート数の変更が功を奏した栃木が先行
栃木ブレックスと千葉ジェッツ、昨年のチャンピオンシップ1回戦で激突した両者の戦いは、最終クォーター残り5分30秒から20-0と走った千葉が逆転勝ちを収めた。
オン・ザ・コート数は栃木の「2-1-1-2」に対して、千葉は「1-2-1-2」。栃木は開幕からここまで「1-2-1-2」を選択してきたが、5試合目にしてオンザコート数を変更した。長谷川健志ヘッドコーチは「今までオフェンスでゲームの入り方が悪かったので」と変更理由を説明する。こうして先発出場したセドリック・ボーズマンが内外バランス良く得点を重ね、第1クォーターで11得点を記録。栃木が25-15と先手を取った。
しかし、オン・ザ・コート数が逆転した第2クォーターに千葉の逆襲を浴びる。西村文男の老獪なプレーメークでノーマークを作られ失点が重なり、特にギャビン・エドワーズにインサイドを破られ8得点を許し、39-39と追い付かれて前半を折り返した。
第3クォーターは拮抗した展開になるも、田臥勇太と遠藤祐亮が要所で試合の流れを呼び込む働きを見せる。特に第3クォーターの最後は堅守とリバウンドという持ち味を発揮。6点をリードして迎えた最終クォーターも良い流れを継続し、ボーズマンとライアン・ロシターを中心に点差を広げていく。劣勢が続く千葉はファウルを連発し、残り6分30秒の時点で早くもチームファウルが5に到達。残り5分30秒には鵤誠司が3ポイントシュートを沈めて70-56とリードを14点にまで広げ、勝敗は半ば決したかに思われた。
栃木を飲み込むブラックアウト、ラスト5分半で無得点
ところが、その栃木を突然のブラックアウトが襲う。千葉のチームファウルが5つに達したことがマイナスに働いたのだ。長谷川ヘッドコーチが試合後に「ファウルをもらいにいこうというだけのバスケットになってしまって、スペーシングとかシュートチャンスに打ちきれなかったりした」と振り返ったように、有利な状況がチームオフェンスの停滞を生んだ。
栃木はインサイド攻めに固執し、ブロックショットを食らっては速攻を浴びて失点を重ねた。両チームともに堅守からの速攻を得意とするが、この時間帯は千葉だけが持ち味を発揮していた。
残り38秒、マイケル・パーカーにバスケット・カウントを決められて70-72と逆転を許した栃木は、田臥の3ポイントシュート、ロシターのシュートがリングに弾かれポゼッションを渡す。残り15秒、栃木はファウルゲームを選択するが、ここで富樫を止めにいった遠藤が痛恨のアンスポーツマンライクファウルをコールされ、判定に激高したロシターまでテクニカルファウルを取られて勝負あり。
一度狂った歯車が再び噛み合うことはなく、栃木は鵤の3ポイントシュートを最後にラスト5分30秒でゴールを奪うことができなかった。70-56から0-20のラン。信じられない大逆転負けを喫した。
「自分たちの強みが何で、それをどこで生かすか」
勝利した大野篤史ヘッドコーチは勝敗の分かれ目を問われ「ディフェンスだと思います」と語る。「最後は自分たちがリバウンドを取って走れたこと、それでリズムができたことで、自分たちの強みが何で、それをどこで生かすかを選手たちが遂行してくれた」
また20-0のビッグランについてはこう語る。「時間を見て、もうヤバイというところで選手たちのお尻に火が付いた印象です。何か変えたわけでなく、もっとハードに、ポゼッションを与えてはいけないということにフォーカスしなさいと伝えました」
残り5分30秒、14点差となった場面で、千葉はタイムアウトを使わなかった。「焦りはありましたよ」と大野ヘッドコーチは苦笑いを浮かべる。「取ろうと思った時に栃木のシュートが落ちたので。僕らよりも先にタイムアウトを取るだろうなという流れで、タイムアウトを残しておきたかったんです。もしあそこで得点を奪われていたら僕らが先にタイムアウトを取らなきゃいけなかった」。結果的に、このベンチワークも勝因の一つとなった。
栃木は大量リードを奪ったことによってメンタル的に守りに入ってしまい、足が止まってしまった。長谷川ヘッドコーチは「ボーズマンがチャンスメークしてそこからスムーズになれば良かったが、すべて彼に任せてしまった」とオフェンスの停滞を分析した。また「鵤のパスミスが大きかった」と名前を挙げて、得点に直結したターンオーバーを悔やんだ。
その鵤は終盤のプレーを悔やむ。「残り5分から別のチームだったと思います。それまではずっと我慢して得点が取れなくてもディフェンスやったりしましたが、残り5分は淡泊なシュートが多かったですし、ディフェンスもイージーにやられるケースがあったので、詰めの甘さが出てしまった」
0-20のランを浴びての逆転負けというのも痛いが、勝っていても負けていても変わらず戦う意思を保つ不変のメンタル、そしてチーム一丸の結束力を武器に昨シーズン王者となった栃木にとっては、それらの持ち味を発揮できなかったという意味で痛い一敗。大量リードからの逆転劇という意味では、チャンピオンシップでのリベンジをあらためて千葉にやられた形でもある。幸いにも、立て直すべき次戦はすぐ明日に控えている。栃木のカムバックに期待したい。