バム・アデバヨ

ホワイトサイドの穴を埋める以上の『満点回答』

19勝7敗と快調に白星を重ねているヒート。フリーエージェントで獲得したジミー・バトラーだけでなく、得点を量産するケンドリック・ナンやルーキーながら強気にクラッチショットを決めるタイラー・ヒーローがブレイクし、特定のエースに頼ることなく全員がフィジカルに戦う集団になったことが成功の要因です。鮮やかな連携には欠けるものの、どこからでも得点できる戦い方で試合ごとに違う選手がヒーローになる良さがあります。

複数の選手が「勝利をもたらすプレー」を決める中で、チームに安定感をもたらしているのがセンターのバム・アデバヨです。ハッサン・ホワイトサイドを放出してアデバヨに賭けたチームの方針に満点回答をしているようなパフォーマンスを見せています。

全員が個人同士のマッチアップで奮闘するヒートのディフェンスは、スイッチを促されればセンターであってもガード相手のスピード勝負に挑みます。ルーキーシーズンからペリメーターディフェンスでの強さを特徴としていたアデバヨはどんな相手でもチェイスできる機動力を持っています。しかし、アウトサイドまで追いかけるということは、インサイドから離れてしまう機会が増え、センターとしてはアンダーサイズということもあって、リバウンドやブロックショットでの貢献度はさほど高くないデメリットもありました。

それが今シーズンは10.6リバウンドを記録しており、チームとしてチェイスするディフェンスをこなしながらもリバウンドへの参加機会を大幅に増やしています。またチーム1位の1.2ブロックとチーム2位の1.4スティールを記録するハードワーカーながら、ファール数が平均2.7回と少なく、アデバヨが長い時間コートに立ってインサイドを支配することがヒートのディフェンスに大きな安定感をもたらしています。

得点面でも昨シーズンの8.9点から15.2点とジャンプアップしており、フィールドゴール成功率も58%を記録します。ヒートはチームとして47%ですが、主力でチーム平均を上回っているのはアデバヨのみ。ミドルシュートが多いチーム事情の中でオフェンスの堅実性という面でもアデバヨは貢献しています。

アデバヨは柔らかなフローターや華麗なステップを持ち合わせず、ビッグマン同士のゴール下での戦いは少し苦手としている反面、スピード勝負に自信があり、コーナーに構えてインサイドにスペースを作っておき、一気に距離を詰めて合わせるのが上手く、ディフェンスからするとボールを持っていない時のポジショニングに常に気を付けなければいけない厄介さがあります。

さらに今シーズンになって「ボールを持った時のプレーメーク」の厄介さが加わりました。どこからでも点が取れるヒートですが、その一方でパサータイプがポイントガードのゴラン・ドラギッチとジャスティス・ウィンスローしかおらず、しかも2人ともケガによる欠場が多くなっています。そんなチームでアデバヨは自らのディフェンスリバウンドからボールを運び、チームメートを動かしてのアシストが新たな武器になってきました。センターとしてはアンダーサイズという弱点を補う機動力を、フルコートオフェンスで存分に発揮しています。

ここまで昨シーズンの倍以上となる4.6アシストを記録し、自信を持ってプレーしているアデバヨですが、ターンオーバー2.9回はチーム最多。それは多少のミスがあってもチーム全体がアデバヨを信頼している証拠かもしれません。もともと高い運動能力は発揮していたものの、3ポイントシュートがないことからオフェンスの中心にはなりにくいと思われていましたが、今のアデバヨは誰もが得点するオフェンスの起点となっています。

26試合で20点以上を記録したのが4試合のみと、得点という分かりやすいスタッツで目立つことが少ないアデバヨですが、試合の中ではありとあらゆる場面に顔を出してきます。積極性が目立つチームメートたちが得点するための起点となり、隙が生まれたら誰よりも早く埋めに行くアデバヨの存在は、ヒートの好調に多大な貢献をしています。