アウトサイドシュートにトランジションと強さを発揮
12月15日、インカレの男子決勝が行われ、筑波大学が91-76で専修大学を撃破した。
第1クォーターの出だし、専修大のエース、盛實海翔が3ポイントシュートを連続で決めるが、ここで筑波も大会最優秀選手賞を受賞した牧隼利が3ポイントを決め返す。さらに筑波は吉田健司ヘッドコーチが「最初の5分、神がかり的な気持ちのこもったアウトサイドシュートに、ディフェンスからのブレイクが出ました。ウチとしては信じられないような入りでした」と振り返るように、高確率でシュートを決め25-21と先手を取る。
一方、専修も3×3の日本代表候補にも選出されている西野曜の得点などで食らいつく。しかし、ここで筑波のビッグマン井上宗一郎の長距離砲がサプライズで炸裂する。普段から3ポイントシュートの練習に取り組んでいる井上だが、今秋の関東大学リーグ戦では計29本中2本成功の成功率6.9%と全く入っていない。それがこの大一番で3本中3本を決めてチームに勢いを与えた。
井上の爆発もあり、試合を通して3ポイントシュート22本中11本成功とアウトサイドが好調な筑波は、10点リードで後半を迎えると、チームの生命線であるディフェンスから速攻を次々と繰り出して第3クォーター途中にリードを20点以上へと広げるなど、最後までペースを握って勝利。3年ぶり5回目の優勝を果たした。
大当たりの井上宗一郎「ずっと練習してきた」
結果的に勝敗を分ける大きなカギとなった井上の3ポイントシュートだが、これはノーマークで放たれたもの。専修の佐々木優一ヘッドコーチは、「フィリップが外に出られないのを突いてくるのは分かっていました。ただ、彼のブロックは相手の脅威なので、ゴール下にいるのが我々のプランでした」と、打たれると分かっていてもフィリップをペイントエリアに配置しておきたかったと振り返る。
この指揮官の判断は、これまでの井上の成功率を考えれば妥当なもの。ただ、悔やまれるのは、井上のアウトサイドシュートについて、予定していた他の選手のローテーションでカバーすることができなかったことだった。
井上はフリーで打てたことに「ありがとうございます。しめしめみたいな気分でした」と笑顔を見せる。「3ポイントシュートは去年からずっと練習をしてきました。入る時は入りますがリーグ戦ではずっと入らなくて落ち込んでいました」と語るが、それでも地道に継続していたシュート練習がこの大一番で実を結んだ。「自分の中でトーナメントとリーグは別物と、割り切れていました」というメンタルの持ち方が、爆発を呼んだのかもしれない。
牧隼利と増田啓介を軸とした4年生の統率力が光る
筑波にとって日本一は、馬場雄大が1年生から3年生の時に達成した3連覇以来となる。吉田ヘッドコーチは「大学バスケットは4年生です。4年生がどれだけリーダーシップを取って、それに3年生以下の選手たちがついていき、どれだけチームとして思いを一緒にして戦っていけるか」と、牧隼利と増田啓介を軸とした4年生の統率力を称える。
そして、「牧にしても増田にしてもバスケットボールも知っているし、うまい選手で、身体能力もあります。ただ、良い時もあれば悪い時もあります。リーグ戦では誰かしらがケガをしていてまとまりがよくなかった。それが今回のトーナメントではそれぞれが持ち味をはっきりできた。ピーキングが本当にうまくいきました」と今大会を総括した。
関東大学リーグ戦では5位に終わりながら、見事な復調でインカレを制した筑波。短期決戦ならではの勢いの大切さ、そして学生スポーツだからこその最上級生の存在の大きさを実感させられる王座奪還劇だった。