大澤徹也

京都を代表してウインターカップに出場する東山は、独特なスタイルを持ったチームだ。プロも含めてほとんどの指導者が「まずはディフェンス、そこから走る展開へ」と言うのとは対照的に、ハーフコートのオフェンスを突き詰め、100点取られても101点取るバスケを目指す。留学生の強力なインサイドを擁しながら、そこに依存しないチーム作りも野心を感じさせる。岡田侑大というスター選手を軸にステップアップを果たした東山は、彼が卒業した後も強豪であり続けている。大澤徹也監督は、6回目のウインターカップに自信を持って乗り込む。

「何もできなかった悔しさから始まった」

──昨年大会で福岡第一に大敗したのは、精神的にもダメージが大きかったですか?

寝込んではいませんが、バスケットが嫌になりました。「福岡第一には勝てないよね、やっぱり強いのは福岡県だよね」と周りの人に言われるのが、やっぱりこたえました。「福岡第一以外だったら勝てていたよ」と気休めを言われても悔しさしかないですよね。「福岡」って言葉に反応したし、緑色を見るのも嫌でした(笑)。

負けた時は本当に悔しいし、それは選手たちも同じです。米須玲音は河村勇樹選手を肌で感じてくれた。松野圭恭もムトンボ・ジャン・ピエールも中川泰志も脇阪凪人も、何もできなかった悔しさを味わって、そこから始まっています。またウインターカップの舞台に帰って来て、今度はどれだけやれるのか楽しみです。

──監督として、ウインターカップの舞台を楽しむ余裕は本当にあるものですか?

もちろんです。私も監督と言いながら、ただのミーハーでもあるんですよ。米須と河村のマッチアップを見てみたいし、脇阪と小川(麻斗)、(クベマジョセフ)スティーブとジャン・ピエールがバチバチやってるのも見たい。それを最前線で応援できるのが私ですし、自分のチームが楽しみに思えるレベルまで来たことが一番うれしいです。

チームの成長はちょっとずつです。ですが選手たちには「当たり前のことを当たり前にできたらレベルは上がるよ」といつも言っています。戦える準備はできているつもりです。もちろん、蓋を開けてみたら50-100になるかもしれません。でも、今年は特に選手たちが自分でこれだけの準備をやってくれました。もちろん周囲の方々の支えはありますが、いろんな部分で選手に任せている部分が多いのですが、試合を見ると「こんなことまでできるようになったのか」という部分も結構あります。

正直、今年は自信があります。本当に見てて面白いチームです。米須と私が、セットオフェンスのナンバープレーを出す時の感覚が一緒なんです。私がフォーメーション1を言おうとする前に、米須が1と言うんです。「こういう状況だからこれで行く」という感覚が私と9割は同じ。別に私から寄せているわけじゃないし、彼も寄せているわけじゃない。それなのに感覚が合うんです。「ちゃんとそれを選べるのか」って、うれしくなりますよね。

東山

「12月の最終週にドカンと上げられるように」

──組み合わせも決まりました。どんな受け止め方をしていますか?

簡単なゲームはありませんが、徐々に上げていける感覚があります。他のチームはどうか分かりませんが、ウチにとっては23日に1試合ウインターカップを経験して、ここで一つ勝って課題を修正してからもう一回スタートという形はありがたい。6試合戦うとなると長いと感じますが、1日空いて5試合やればいいんだと思えます。

──チームのポイントとしてはハーフコートのバスケット、そこからブレイクに持っていくなどオフェンスがどう機能するかだと思いますが、個人としてカギになる選手、このウインターカップでブレイクしてほしい選手はいますか?

2年生で4番ポジションをやっている中川泰志ですね。普段は20点くらい簡単に撮る選手が、インターハイで福岡第一が相手になると取れない。それがなぜなのかを練習で追求してきて、やれる実感が出てきています。ウインターカップでどれだけやってくれるか楽しみだし、リバウンドであったり走りであったり、彼がキーマンになると見ています。

──今はウインターカップに向けた最終調整かと思います。手応えはいかがですか?

大学生と練習試合をさせてもらって、良い感覚を得られています。あとは体調とケガの面。キャプテンがしっかりしているので、大会に向けてコンディションは上がって来るはずです。良い感覚はあるので、最後の1週間でメンタルの部分を仕上げて、12月の最終週にドカンと上げられるように。そういう意味ではここで完成しても良くないんです。課題もいくつか見つかっているので、そこを修正しながらケガせずウインターカップを迎えたいです。

課題の一つは、ハーフコートのオフェンスが上手く行かなかった時にディフェンスに引きずってしまうこと。一つひとつの切り替えが大事です。あとは簡単なノーマークをポロポロ落としちゃうことがあります。当たりの強い大学生チームとやると、抜けるんだけどその後の精度が落ちたりするので、そこは修正しなければいけません。悪いプレーを2度続けないのが大事で、1回で切ることをガードにはいつも言います。

大澤徹也

「岡田侑大がいた代と同じぐらい手応えがあります」

──それでは、ウインターカップでの目標はどこに置きますか?

日本一と言いたいところですが、やっぱり一つひとつをしっかり勝つこと。昨年は福岡第一との戦いにすごく意気込んでいたところもありましたが、今は福岡第一も強いけど、全く戦えないわけじゃないという手応えもあります。「今回は分からないぞ」という気持ちですね。ただ、やっぱり1試合ずつ勝ち切って、最後に頂点に立てればと思います。

──最後に、ウインターカップを楽しみにしているバスケットボールファンに、東山のどこに注目してほしいかを教えてください。

東山はガードとフォワードと留学生の軸がしっかりしたチームです。状況判断を突き詰めてきたので、相手がこう止めに来るならこんなパスが出る、こう来たらああやって裏を突くんだという状況判断が形になってきています。ウチはオフェンスのチームです。ハーフコートのバスケットと、米須玲音がどれだけブレイクを出せるかがポイントになります。

岡田侑大がいた代と同じぐらい手応えがあります。岡田たちの時は私自身が半信半疑と言うか、「インターハイの決勝に行けたから、ウインターカップでも行けるんじゃないか」という感覚でしたが、今年は手応えがあります。1年前のああいう負け方から始まったチームの集大成を見てもらいたいです。

東山