シーホース三河

新戦力シモンズが奮闘、堅守から走るバスケを展開

12月1日、天皇杯のベスト16でシーホース三河が名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦した。粘り強いディフェンスに加え、第3クォーターにファストブレイク連発によって一気に突き放した三河が75-59で快勝している。

第1クォーター、三河はエースのダバンテ・ガードナーが開始5分で個人ファウル2つと、いきなりファウルトラブルに陥りベンチに下がってしまう。しかし、ここで加入したばかりのセドリック・シモンズが攻守に渡ってゴール下で奮闘。前半で12得点を挙げたシモンズの活躍に加え、しっかりしたチームディフェンスで名古屋Dにタフショットを多く打たせた三河が、35-28とロースコアの中でもリードして試合を折り返す。

後半に入ると、三河はさらに守備のプレッシャーを強めていく。その結果、ディフェンスリバウンドからの素早い攻守の切り替えによるトランジションが増える。その良い流れの中で、ガードナーがゴール下への迫力満点の突進で相手守備を蹴散らしてのバスケット・カウント。さらに岡田侑大も鋭いドライブでディフェンスを切り裂いていく。こうして走る展開に持ち込んだ三河は、このクォーターを29-15と圧倒。リードを一気に20点以上に広げると、第4クォーターも守備が崩れず楽々と逃げ切った。

シーホース三河

「ディフェンスをやらないと勝てない」という意識

三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは、「負けたら終わりというゲームの中で、みんながやるべきディフェンスにフォーカスしてくれました」と勝因を語る。

このディフェンスこそ、約2週間のブレイク中に集中して取り組んでいたこと。「ローテーションのやり方、プレッシャーのかけ方、相手のフォーメーションに対しての練習を徹底的にやりました。そしてピック&ロール、3ポイントのディフェンスをしっかりやった結果、59失点に抑えられました」

このように指揮官は振り返り、守備意識の高まりに手応えを得ている。「ここまでの接戦での負けは無駄でなかった。いくらオフェンス能力があってもシュートが入らない時はあります。変なオフェンスをすれば逆速攻も食らってしまいます。2番、3番、4番はどこにも負けないオフェンス力を持っていますが、それでもオフェンスは完全に水物です。それにみんなが気づいてくれた。ディフェンスをやらないと勝てない。その意識をもって練習に取り組んでくれました」

第3クォーターの走る展開こそ、三河が推し進めていくべきスタイルと鈴木ヘッドコーチは強調する。「ベテランがいる時はハーフコートに頼っていましたけど、今のチームはディフェンスを頑張って速攻を出す。速い展開に持っていくのが我々の目指しているところ。それをやらないでゆっくりプレーしても中々、ケミストリーはできてきません」

シーホース三河

「とにかく焦らないで一歩一歩前進していきたい」

また、この試合、14得点、10リバウンドを記録したシモンズについて、鈴木ヘッドコーチは、その堅実性を高く評価している。「特別なことをしなくても、我々のやろうとするディフェンスをしっかりプレーしてくれる選手を探しました。チームが求めることをしっかり実行してくれていて、非常に彼の良いところを出せています」

現在、リーグ戦では4勝12敗と苦しんでいる三河だが、これまで多くの栄光を勝ち取ってきた伝統ある強豪だ。だからこそ、ここで負けて年明けの天皇杯に出られないことがあれば、それはチームの歴史においても大きな事件となる。

「常勝を求められているチームであり、ここでリーグ戦のように負けて年明けの天皇杯に出られなかったら大変なことでした」と指揮官も語るように、少なからずプレッシャーもあったはず。だが、それを乗り越えたことは、今後のリーグ戦に向けても明るい兆しとなりそうだ。

そして、三河でのヘッドコーチ歴が20年を超える百戦錬磨の指揮官は、チームの浮上に自信を見せる。「ここまでどんな嫌な負けをしても腐らないで一生懸命やってくれた。こういうチームは絶対に強くなります。とにかく焦らないで一歩一歩前進していきたいです」

タレントレベルはリーグ屈指の三河が、序盤戦の苦しい経験を経て今、自分たちが進むべく方向性を確立しつつある。これからの巻き返しに期待を抱かせる今日の勝利となった。