宮澤夕貴

バスケットボール女子日本代表は『東京オリンピック プレクオリファイングトーナメント』でインド、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリアに全勝し、結果だけでなくパフォーマンスも上々と大きな収穫とともに今年の代表活動を終えた。今回、髙田真希に代わりキャプテンを務めたのは宮澤夕貴選手だ。2016年のリオ五輪では若手の一人という立ち位置だったが、その経験を糧に成長のスピードを上げ、サイズのあるシューターとしてのプレースタイルを確立。スタメンに定着するだけでなく『日本のエース』にまで成長した宮澤に、その意気込みを聞いた。

「良い雰囲気で大会を終えることができました」

──マレーシアでのオリンピックプレ予選は上々の結果に終わりました。宮澤選手にとってはどのような収穫がありましたか?

今回は3試合だけの大会ですし、準備期間も短かったので、すごく早かったという印象です。それでも1試合1試合でチームが成長するのが見えて、自分がキャプテンをやっていて、特に若い選手がイキイキとプレーしてくれたので、良い雰囲気で大会を終えることができました。私自身は3ポイントシュートの確率がそんなに良くなかったんですけど、リバウンドの面では収穫がありました。4番ポジションで出てもリバウンドが取れたことは自信になりました。

──今夏の合宿では、3ポイントシュートだけでなくドライブでもリバウンドでも、いろんなプレーでチームに貢献できる選手でありたいと話していましたが、ドライブからの得点もあって、実際にそうなりました。試合に出ている時の意識で何か変化はありましたか?

キャプテンじゃなくてもやらなければいけないと思っていたんですけど、キャプテンになってもっと強く意識するようになりました。練習から一つひとつのことをしっかりやって、試合でも自分がやらなきゃいけないという気持ちはすごくありました。

リバウンドについては、タクさん(渡嘉敷来夢)が相手の大きい選手をボックスアウトしてくれます。そうすると、相手は日本のトランジションの速さを警戒してあまり強く取りに来れないので、それだけ取りやすかったのはあります。1本取られて相手が強気でグイグイ来るようになると自分たちが厳しくなるので、今回はうまく行ったと思います。

宮澤夕貴

代表キャプテンは「リュウさんに相談しながら」

──宮澤選手は去年の時点で、若手が増えたチームにおいて自分が引っ張る立場にならなければいけないと話していて、今は実際にキャプテンを任されるようになりました。若い選手に対してはどんなアプローチをしていますか?

若い選手には言葉で言うより見せた方が良いと思っています。練習の意識、一つひとつの取り組み方を、私はリュウさん(吉田亜沙美)を見て学びました。それを若い子たちにどう伝えるか。キャプテンであっても、その人の練習への取り組み方が良くなかったら、その人について行こうとは思わないですよね。だからそこはすごく意識しました。今回はチームの雰囲気を見て「あの時はどうすれば良かったのか」とリュウさんに相談して、アドバイスをもらいながらでした。

チャイニーズ・タイペイ戦の試合後に、トムさん(トム・ホーバス)が結構キツく怒ったんですね。そこでフォローするのがキャプテンの役割だと思って、「こうやって言われたけど、個々で今日の反省をして、明日はオーストラリア戦でチャレンジの機会だから、自信を持ってプレーするだけだよ」とその場で伝えたんです。

でも、あそこで何を言えば良かったのかとリュウさんに相談したら、「アース(宮澤)はトムさんと長いから、厳しいことを言われても自分のためだと分かるけど、若い選手はそうじゃない。『みんなができると思っているからトムさんは言うんだよ』と言葉にしてあげないといけない」と教えてもらいました。それでオーストラリア戦のミーティングの時に、「トムさんは昨日ああ言ったけど、絶対にできない人には言わないから。今日はポジティブに吹っ切って頑張りましょう」と伝えました。そうやってリュウさんの考え方を参考にしながら、自分の理想とするキャプテン像に近づきたいです。

──宮澤選手から見れば、吉田選手はキャプテンのお手本ですよね。その吉田選手が戻って来たことで、自分が一歩引くとか、任せてしまおうと思ってしまうことはありませんでしたか?

なりませんでした。リュウさんがいてくれて安心感があります。一番上ですし、本当に誰よりも声を出します。キャプテンだった時も練習で一番声を出して引っ張ってくれていたので。自分がキャプテンだけど、よりキャプテンっぽいのはリュウさんだとは思いましたが、でも私にとってもすごく良い機会なので、リュウさんを見習って近づきたいと思っていました。まずは自分がやる、やりながらリュウさんに助けてもらうイメージでした。

宮澤夕貴

「チームのことを第一に考えて、もっともっと」

──宮澤選手の考えるキャプテン像はどんなものですか?

誰よりもチームのことを考えて、誰よりも一生懸命やる、そういうキャプテンになりたいです。もちろん声を出して引っ張ることも必要ですが、みんながキャプテンを見るチームになれば自然にまとまるものだと思うので。誰かが「まとまろう」と言わなくても、みんなが自然にまとまるような雰囲気を作るキャプテンになりたいですね。

──何人かの選手に聞きましたが、今回のチームはすごく雰囲気が良いという話が出ました。

それはリュウさんがいたからなのか、個々の意識に違いがあったのかは分からないですが、その雰囲気の良さは持続させたいですね。そうなっていない時に、私がキャプテンとして何かしなければいけないんだと思います。これまで雰囲気作りのために何か強く言うようなことはあまりしてきませんでした。高校の時にはキャプテンだったので、嫌われ役になることも必要だと思って結構強く言うこともあったんですけど、JX-ENEOSに入ったら若手だし、そうやって言うことがなくなっていました。でも、チームに必要であれば言うべきだし、これからはキャプテンでなくても、キャプテンを助けられるようになりたいと思いました。

──今年の代表活動は終わりですが、Wリーグが再開して皇后杯があって、2月にはまたオリンピック予選があります。まずはJX-ENEOSに戻って自分の成長に向き合う必要がありますが、自分にどんな課題を課していきますか?

今回は本当に良い経験ができたのですが、課題ももちろんあります。ディフェンス面での身体の強さ、3ポイントシュートをしっかり決めきること、ドライブも引き続き課題です。そういったことをしっかりやりながら、チームを引っ張っていく立場なので、精神面でもまとめられるよう意識しながら、チームのことを第一に考えて、もっともっとやっていこうと思います。