ディフェンスの我慢比べ、序盤のリードが生きる
11月2日、アクシオン福岡でウインターカップ福岡県予選の決勝が行われた。男子の決勝では、どちらも全国大会の優勝候補として挙げられる実力を持つ福岡第一と福岡大学附属大濠が激突した。
試合開始から西田公陽と平松克樹の3ポイントシュートを決めた大濠が6-0とリード。幸先の良いスタートを切ったはずが、ここから7分間得点が止まる間に福岡第一に15点を奪われ、以後は追い掛ける展開となった。福岡第一で目立ったのはディフェンスで、横地聖真のドライブからズレを作る大濠のオフェンスに対し、起点となる横地に激しいプレッシャーを掛けて攻めの形を作らせなかった。
大濠もディフェンスで踏ん張り、特に福岡第一にファストブレイクの機会を与えず波に乗せないが、とにかく点が取れない。イージーシュートのチャンスを作れずに、シュートが決まっても単発に終わる。横地がコートのどこに行っても内尾聡理がフェイスガードで張り付き、前半終了間際にはピタリと身体を寄せる山田真史が横地からオフェンスファウルを誘発。徹底したディフェンスを遂行して大濠に攻めの起点を作らせなかった。
ただ、福岡第一も留学生プレーヤーのクベマジョセフ・スティーブが前半途中で足を痛めてベンチに退き、こちらもオフェンスの迫力不足に。神田壮一郎もケガをして思うような試合運びができなかったが、それでも最後は3ポイントシュートとフリースローでの連続得点で34-16とリードを広げて前半を終えた。
21点差の最終クォーター、大濠が見せた意地の追い上げ
後半に入って大濠はマークの厳しい横地に固執せず、西田や平松がボールを動かすことでオフェンスに流れを作り出す。対する福岡第一は小川麻斗が空中で横地のブロックをかわすダブルクラッチ、河村勇輝もスピードに乗ったドライブからのフローターと個人技で得点して一歩も引かない。無事にコートに戻ったスティーブがゴール下でディフェンスの要となってリードを保ち、55-34と大差を付けて最終クォーターへ。
だが、ここから大濠が意地を見せる。圧倒的な走力で全国を制してきた福岡第一に対しても走り負けることなく、『走れるビッグマン』木林優を軸に大量ビハインドを挽回すべく思い切りの良いプレーを見せる。福岡第一はスピードで主導権を取り戻そうとギアを上げるも、これでチームの呼吸が噛み合わなくなりターンオーバーが増え、大濠に付け入る隙を与えることになった。
西田と平松に連続3ポイントシュートを決められ、残り2分を切って67-58と1桁差に。それでもここからスティーブが驚異的なパフォーマンスで大濠の勢いを断ち切る。自陣のスローインでパスを受けると、そこから力強くボールをプッシュし、大濠守備陣をドライブで突き破ってのダンクで満員の会場を沸かせる。守っては西田のジャンプシュート、横地のレイアップを叩き落す連続ブロックショットで追撃を断ち切った。福岡第一が最終スコア69-60で勝利している。
勝利にも笑顔なし「気負いすぎて空回りしました」
昨年の決勝も福岡第一と大濠の顔合わせで、敗者はウインターカップに出場できなかったため『事実上のウインターカップ決勝』という形で注目された。今年は決勝を前に両校とも出場権を確保しており、井手口孝監督も「去年のほうがお互いに思いは強かったです」と明かす。「途中までは良かったんですけど、なんとなく大濠も全国は決まっているからこのまま何もしないのかと思ったら違いました」と終盤に猛追された試合を振り返り、それでも勝ったことに安堵した。
福岡第一の河村は「緊張感を持ってこの試合に臨みましたが、気負いすぎて空回りしました。節目の試合で、後半ああいうプレーしかできず、自分にとっては反省の残る試合でした」と、優勝にも笑顔はなかった。
ウインターカップの前年王者にして今年のインターハイ王者でもある福岡第一の優勝で、福岡県予選は幕を閉じた。それでも、勝って浮かれる隙はこのチームにはない。「もちろん明日も練習です。しっかりやらなきゃいけない」と河村は気を引き締めた。一方、敗れた大濠は、「これから戻って練習です」と急いで荷物をまとめて会場を後にした。両校ともに、ウインターカップでどのようなプレーを見せてくれるのかが楽しみだ。