苦しい条件が揃う中、最も有利な形で交渉をまとめた
カイリー・アービングを含むセルティックスとの大型トレードは、アイザイア・トーマスの股関節の負傷が思っていたよりも深刻と判断され、一度は暗礁に乗り上げた。だが最終的にセルティックスが当初の条件だったトーマス、ジェイ・クロウダー、アンテ・ジジッチ、ネッツの2018年ドラフト1巡目指名権に、ヒートの2020年ドラフト2巡目指名権を加える形で折り合いをつけた。
アービングとトーマスというオールスター2選手を含むトレードを成立させる難しさは、並大抵のことではない。そんな難題を解いてみせたキャブズのコビー・アルトマンは、GMに就任してまだ数カ月の経験しかない、いわば『グリーンボーイ』のフロントだ。今回のトレードでキャブズは現在の選手層に厚みを持たせられたし、アルトマン自身も他チームのフロントから尊敬を勝ち取るに至った。
その中でもアルトマンの手腕を称えたのが、キャブズGMの前任者であるデイビッド・グリフィンだ。
グリフィンは『NBA TV late Tuesday Night』に出演した際、「周辺の状況を考えれば、コビー・アルトマンは素晴らしいトレードを成立させたと思う」とコメント。「優勝を狙うチームを作るなら、中途半端なことは許されない。自分の考えについてくるのか、それとも反対方向に向かうかの二つに一つだ。カイリーには明確な目標があった。それはキャブズの歩調に合うものではなかったのかもしれない」
グリフィンは、キャブズが獲得した選手についても、次のように話した。
「アイザイアを除いて考えたとしても、コビーは素晴らしい価値のある選手たちを獲得できた。それにボストンも、25歳でこれから全盛期を迎える選手で、NBAチャンピオンとオリンピック金メダリストの経験があり、選手としてのポテンシャルを開花させたばかりのカイリーを獲得できた」
トーマスの復帰時期は未定だが、レブロン・ジェームズ、アービングら個性の強いスーパースターを束ねてきたグリフィンは、選手本人の言葉を信じると言う。
「アイザイアがリーグで活躍できているのは、他の選手にないくらい強いハートを持っているから。彼が『100%の状態に回復する』と言うのなら、私は信じる。これまでに明らかになっている情報を見ても、彼が復帰できない理由は見当たらない」
今回のケースの場合、一度は成立が発表された後、メディカルチェックでの結果が問題になり破断になりかけた。もしトレードが取り消されていたら、あらためて他のチームと交渉しても、キャブズは足元を見られて有利に交渉を進められなかった可能性が高い。
巷では、もしグリフィンがキャブズのGMのままだったら、レブロンからの独り立ちを希望したアービングを思いとどまらせることができたのではないか、とも言われている。だが、アービング一人に対して、オールスターを含む3選手とドラフト1巡目、2巡目指名権という条件を引き出したアルトマンの手腕もまた、正当に評価されるべきだ。