NBA選手も参加するハイレベルなプロ・アマリーグ
ケビン・デュラントが加入し『スーパーチーム』となったウォリアーズの優勝で2016-17シーズンが幕を閉じてから2カ月強、カイリー・アービングとアイザイア・トーマスの交換トレードなどオフシーズンの話題も盛り上がっているが、やっぱり見たいのは試合。とはいえ開幕戦まではまだ2カ月弱あり、長い長いオフシーズンの半分を過ぎたばかりだと思うと、NBA開幕があまりに先であることにタマラン気持ちになってしまうのは自分だけではあるまい。
しかし、アメリカにはオフシーズンの間でも、ハイレベルなバスケットボールの試合が観戦できるリーグがあった。それが『DREW LEAGUE』(以下Dリーグ)だ。
日本では決してメジャーではないが、Dリーグをざっくり説明すると、毎年5月末から8月初旬に開催される超ハイレベルなプロ・アマ混合のリーグ。 過去にはコービー・ブライアントやレブロン・ジェームズ、ケビン・デュラントなど、スーパースターたちもプレーしている。彼らも好きで始めたバスケットマン。オフが長すぎるとワークアウトだけでは物足りず、試合をしたくなるとDリーグの会場にフラリと足を運ぶ。「いつ見に行っても誰かがいる」ぐらいの頻度で現役のNBA選手が出場するとあって、人気も年々上昇しているそうだ。
そんなわけで、所要でロサンゼルスにやって来たので、きっちり一日の予備日を設けて、ホントはこれが本命というDリーグの視察へ。驚いたのは入場料無料。そして会場に入って「知ってる選手いるかなー」と見回した瞬間に目に飛び込んできたのは、あのモッサモサのヒゲ。そう、ロケッツのジェームズ・ハーデンだ。タダでハーデン見ちゃっていいのか!?
ちなみにDリーグは、チームとのコネクションや実力さえあれば、プロもアマチュアも高校生もだれでもプレーすることが可能。ただしNBA選手は、7月からしかプレーできないというNBAの規約があるため、見に行くなら7月以降がオススメ。チームの承諾さえ得られればどのチームにも参加が可能(プレーオフからの途中参加はNG)で、シーズン中のチームチェンジも自由。喧嘩したので別のチームに移籍という話もよくあるそうだ。
Dリーグの一番の価値は、NBAを夢見るプロ・アマ選手たちが、NBA選手とガチンコ勝負するチャンスがある点。コートサイドにはスカウトやエージェントもいて、知名度の低い選手にとっては登竜門的な要素も。必然的に選手たちのプレーは熱を帯び、それは実戦に近い環境でプレーしたいNBA選手にとっても好都合。こうしてレベルの高い『場』が構築される。ちなみにこの夏にアルバルク東京に加入した安藤誓哉は、Dリーグでのプレーがカナダのコーチの目に留まって契約に至ったそうだ。
このようにドリューリーグはオフシーズンにNBA選手を見ることができて、レベルの高い攻防が繰り広げられる最高のリーグなのだが、それに加え存在意義が素晴らしいことにも触れておくべきだろう。1973年、アルビン・ウィリスによって設立されたDリーグは、現在に至るまでロサンゼルスの『サウス・セントラル』と呼ばれる全米でも最も治安の悪い場所で行われている。その地域の子供や青年たちがバスケットボールに夢中になることで、犯罪やドラッグにかかわらないようにと、子供たちを犯罪から遠ざける役割を果たしている。「試合を見ている間は犯罪が減る」という話もあるほど、その影響力は大きい。
またNBA選手が来るようになった現在は、そのような選手たちを見本とし、努力すればあのようにスターになれるということを子供たちに身近に感じてもらう、人生教訓の場としての意味合いも強くなっている。選手たちもその意義を理解し、フラリと現れてプレーしたとしても、子供たちへのファンサービスは怠らないんだとか。
治安のとても悪いエリアにあるアリーナでの開催であり、以前は黒人の観客しか寄り付かなかったそうだが、現在はSNSやインターネットの影響もあり、白人やアジア人、カップルから親子まで、あらゆるバックグラウンドを持つバスケファンが観戦に来るようになっている。
全米で最も治安が悪いと言われる『サウス・セントラル』で、子供や青年たちに「ライフ・レッスン」を伝える、最高に崇高でエキサイティングなリーグでした!