デュラントは『ウォリアーズ包囲網』を歓迎
ステフィン・カリー、ジェームズ・ハーデンらが結んだ2億ドル(約218億円)超えのスーパーマックス契約も大きな話題となったが、ケビン・デュラントが大幅な年俸減額を受け入れてウォリアーズへの残留を決めたことも、今夏のサプライズだった。
デュラントには、最大で年俸3400万ドル(約37億円)という条件でウォリアーズと再契約する権利があったにもかかわらず、彼は1000万ドル(約11億円)近くの減俸を受け入れ、昨シーズンの年俸2650万ドル(29億円)より低い来シーズン2590万ドル(約28億円)という条件で再契約を結んだ。それもこれも、ウォリアーズの優勝メンバーと来シーズンも一緒にプレーするための決断だった。
カリーとの再契約は、サラリーキャップを超過してもマックス契約を結べる『バード例外条項』が適用されるためチームに与える影響は少なかった。だが、もしデュラントが『本来もらうべき報酬』を望んでいたら、アンドレ・イグダーラ、ショーン・リビングストンをチームに残すことは難しかっただろう。
デュラントは、年俸減額を受け入れた理由を『The Athletic』に告白。イグダーラ、リビングストン、カリーらが「相応の報酬を受け取るべき」と主張した。
「僕はスマートな人間だと思うし、今のチームのまま続けたい。それに、アンドレ、ショーン、ステフたちは、相応の報酬を受け取るべき。可能な限り最高額を受け取るべき選手たちだ。これまで彼らは本来もらうべきより少ない金額を受け取っていた。どこかのタイミングで、彼らが相応の金額を希望するのは分かっていたことだしね」
「批判されるのは、僕たちがウォリアーズだから」
「それで、どういう結果になったとしても良いと思って、自分から一歩下がってみた。その上で得られるものを得た感じなんだ。僕はチームを維持したかったし、自分が行動することで、球団が全員を呼び戻す上で役に立てると思ったんだ。それに、結果的に自分が得るはずだったお金なわけだから、どうしようと僕の勝手だよね。やりたいようにやったまでだよ」
またデュラントは、かつてティム・ダンカンとダーク・ノビツキーがそうしたように、チームの懐事情を第一に考えて減額を受け入れたことも明かしている。そして、ウォリアーズに対する批判についても、こう答えた。
「批判されるのは、僕たちがウォリアーズだから。僕たちがやることのすべてを嫌う人たちがいる。僕はティム・ダンカンやダーク・ノビツキーが、どうやってチームを助けてきたかを見て学んだ。彼らにできたのだから、自分にだってやれると思った。それにね、僕たちを批判する連中は、お金が絡むことでチームが解体されることを望んでいたんだ。そんなことにはさせたくなかった」
「ベストプレーヤーが固まっても良いじゃないか」
今オフは、特に西カンファレンスのチームの補強が際立った。ロケッツはクリス・ポール、サンダーはポール・ジョージ、ティンバーウルブズはジミー・バトラーを獲得するなど、西は完全にウォリアーズ包囲網を敷いている。
この状況について、デュラントは「多くのチームのGMが、やる気になっている」と言う。「以前は守りに入るGMが多かった。できるだけ支出を抑えて、毎年のドラフトで獲得する選手を軸に無難なチーム作りをしていた。でも今は違う。現状に落ち着くチームはいない。どのチームも勝とうとしている。だからベストプレーヤーを集めているんだ」
「NBAは素晴らしいリーグで、ベストプレーヤーが大舞台で活躍する姿を皆が見たがっている。いくつかのチームにベストプレーヤーが固まっても良いじゃないか。これがこのリーグ。スター選手によって成り立っているリーグ。スター選手がリーグが進むべき方向性を決めているのは良いこと。これからの世代のスター選手も同じことを繰り返す。そういう時代を僕たちが始めたのだと思う」
ライバルたちが大規模な補強をしても、『スーパーチーム』結成1年目に優勝という結果を残したデュラントからは余裕が感じられる。昨シーズンはレギュラーシーズン、プレーオフを通じて圧倒的な強さを見せつけたウォリアーズを中心に、西は群雄割拠の時代に突入する。