「3ポイントシュートだけじゃない部分が出せた」
宮澤夕貴にとって今回のアジアカップは難しい大会となった。それでも苦しい状況に耐えて、上向きに転じるチャンスを確実にとらえ、最後は優勝とともに大会ベスト5を勝ち取っている。
今大会は万全のコンディションで臨んだはずが、体調不良で初戦を欠場。その後もずっと37度台の微熱が続いた。それでも本人は「でもやったら一緒です。言い訳にもしたくないですし」と、その話題には触れたがらない。
優勝に向けての正念場になったオーストラリア戦、中国戦ではいずれも前半はタッチが悪く、シュートがなかなか決まらない。本来であればエースとして、自分の得点で試合の流れを引き寄せたかっただろうが、調子が悪くてもできるディフェンスとリバウンドでチームに貢献しつつ、流れを待った。
準決勝のオーストラリア戦では後半開始とともにシュート感覚が復活。次々と3ポイントシュートを決めて一気に勝利を引き寄せる仕事をした。決勝の中国戦ではそこまでの爆発はなく、8得点6リバウンドの数字に終わったが、40分のうち35分という長い時間コートに立っていたことがトム・ホーバスヘッドコーチからの信頼の表れだ。日本代表のベースとなるディフェンスとリバウンドにおいて、宮澤は外せない存在となっていた。
「調子はすごく良かったとは言えないんですけど、その中でもリバウンドに絡めたり、3ポイントシュートだけじゃない部分が出せたのは、収穫だったのかなと思います」と宮澤は言う。
「素直にうれしいですけど、もっともっとできたかなっていうのが、正直な感想ですね。でもチームとしては(本橋)菜子がああやって爆発して、それぞれ大会で調子の良い選手を持ってきてすごく良かったんじゃないかなと思いますし、ディフェンス面でもチーム全員で守って、そこから点数に繋げられたので、良かったんじゃないかなと思います」
「追いつける、追い越せると全員が信じている」
今大会のチームとしての収穫は、ビハインドを背負っても慌てず騒がず、しっかりと耐えて逆転勝利へと持って行ける強みを出せたこと。特に若手中心でチームを再建している中国とのチームの完成度、メンタルの差は大きく、決勝の勝敗はここで分かれたと言える。
逆転勝ちができる理由は何か。「後半が強いのか、前半が弱いのか分からないですけど」と宮澤は言うが、そこには確かな手応えがある。
「オフェンスでいくらシュートが入らなくても、ディフェンスでちゃんと守れば0-0の状態なので、しっかり守って速い展開に持って行ければ、日本のバスケットができると思います。チームとして、まだ大丈夫っていうのが自分たちの中にある。ビハインドであっても、追いつける、追い越せると全員が信じてやっているので」
もっとも宮澤は「前半に自分たちのバスケットができないのは今後の課題」と弱点にも目を向ける。「相手が強くなった時に、前半にああやって点数が離れたら、簡単には追いつけなくなるので、その部分でディフェンスを最初からやるっていうのが、これからの課題です」
東京オリンピックまで、短いようでまだ長い。個々の課題、チームとしての課題は、これから始まるWリーグでの戦いの中でそれぞれが向き合っていくことになるが、宮澤の言葉を聞く限り、アジアカップで素晴らしい優勝を勝ち取ってもなお、それぞれが責任感と危機感を持って日々に向き合ってくれるに違いない。