栃木ブレックス 鎌田眞吾代表が語る2017年夏のチーム作り(後編)「今までの長所を継承しながら、より強いブレックスに」

2017/08/19
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

Bリーグが始まって最初のオフも半分が過ぎた。ほとんどのチームが編成を終えて、新シーズンに向けたトレーニングも本格化しつつある。リーグが統合されてクラブや選手を取り巻く環境が大きく変わる中、各チームの編成はどのような考えの下に行われたのか。Bリーグ初代王者に輝いた栃木ブレックスの鎌田眞吾代表に話を聞いた。

栃木ブレックス 鎌田眞吾代表が語る2017年夏のチーム作り(前編)
「やはり『ブレックスらしさ』がポイントになります」

「選手の年俸は総じて上がっているとは思います」

──リーグ全体の話になるのですが、Bリーグになって選手の年俸が一気に上がっている感覚はありますか? リーグとしては1億円プレーヤーの誕生を一つのテーマにしていますが。

おそらく現時点では出ていないですよね。

──正式な数字が出ているわけではありませんが、5000万円プレーヤーはもう何人もいるような気配です。

噂ベースの話はたくさん聞きますが、私の立場だと自分たちの経営状況を元に決めていくしかありません。使える金額はこのくらい、というバジェット(予算)があって、そこを崩してまでやることにはリスクが生じます。経営者として言えば、そこで無理はできません。自分でGMもやっている立場だと、会社の懐事情が分かっているので、勝負をかける時はかけることができますが、そこは慎重に判断していくつもりです。

ブレックスで言うと全体のバジェットが決まっている中で選手が13人います。その中で主力と控えがいるバランスを考えれば、控え選手が主力として引き抜かれていく時には当然、年俸は上がるでしょう。主力と控えでは扱われ方も違いますが、金額も当然違ってきます。そういう意味で年俸は総じて上がっているとは思います。

──選手年俸のベースが上がるのは選手にとっては良い話だし、ファンからしても夢のある話です。ただ経営者からすると厳しい面もありますよね。

やっぱりプロスポーツですから。子供たちがバスケットボール選手を目指すにあたって、『1億円プレーヤー』には夢があります。でもそれはマーケットを広げていかないと実現できない話です。正直、この1年はBリーグ開幕バブルもあって、そのまま続く保証はありません。もちろん下げちゃダメだし、上げていかなきゃいけないんですが、これはBリーグに関わっている全員でやっていくことです。これからクラブの財務状況が公表されていくと思いますが、それぞれのチームがどれだけ人件費を使えるのかな、なんていうのを見るのは今後楽しみです。

「目の前にある『やるべきこと』に力を注ぐのが強さ」

──ヘッドコーチの人事についても聞かせてください。トーマス・ウィスマンから長谷川健志へと指揮官交代がありましたが、現状維持よりも変化を選択したということですか?

優勝したタイミングではありますが3年の契約期間が満了となり、また新しいブレックスを作り続けなくてはいけない。そういう意味でヘッドコーチの交代を行いました。私になって6年、どのヘッドコーチにも任期を全うしてもらっていて、良いところはしっかりと残しながら、次の世代にチームを受け継いでいます。ヘッドコーチ交代をネガティブに受け止める人もいるかもしれませんが、今までの長所を継承しながら、より強いブレックスを作っていくためのものです。

先にも話した「こうあるべき」というブレックスの未来像があって、長谷川さんもこれに非常に共感してくれています。個人もチームも調子の良し悪しはシーズンを通して必ずあるんですけど、悪い時にも誰かが絶対にカバーする。それは場面で見れば個人の頑張りですが、全体で見ればチームの力です。それができたのが今のブレックスの強みだと思っています。

──言葉で言うのは簡単ですが、コートで実際にやるとなると別ですよね。秘訣はあるのでしょうか?

どうでしょうね。真面目な選手が多いことじゃないかと思います。純粋で目の前のことに取り組むことができるかどうか。昨シーズンのブレックスは「チームのために」を常に考えられる選手の集まりでした。目の前にあるやるべきことを遂行する、そこに力を注ぐのが強さだと思います。「なんでこの練習をしているのかな」とか「間違っていたらどうするんだ」という話をしても仕方ない。それより、今やるべきことにしっかり取り組むこと、それは自分の成長にもなるし、チームのためにもなります。

──そんなチームの雰囲気を作る上で、田臥選手の影響力は大きいですか?

もちろんです。彼はそれを体現して見せるタイプの人間です。それを見て感化される選手が数多くいるわけで、影響力は大きいですよね。田臥選手だけでなく竹内選手のような上の年代の選手が非常に真面目に取り組むので、下の選手はふざけてられないというか、生半可なやり方ではできません。引退した渡邉氏もそうで、普段はおちゃらけていますが、練習では常に本気ですし、ウチは外国籍選手も総じて勤勉です。強さの秘訣があるとしたら、そういったところだと思います。

──そういう意味で、編成で取って来る選手の方針はブレないですね。

昨シーズンから入れ替わりもありましたが、そこは間違いなくブレていません。そこはまず「なんでウチに来るの?」という話をきっちりします。そこの確認は大事だと思っています。

「育成のカギはベテランを含めたバランスです」

──栃木にはかつて「D-RISE」があり、もともと育成を強みにしてきました。長谷川ヘッドコーチという人選は、その部分を強化する狙いもあるのでしょうか。

そうですね。須田選手もクマも大学までとりわけすごいスポットライトを浴びていた選手ではありません。彼らは栃木で大きく伸びたと言っていいと思います。遠藤(祐亮)選手は私がGMになった1年目にD-RISEから引き上げた選手です。最初はチームを主力として支える状態ではなかったのですが、チームで揉まれる中で成長してくれました。

育成のカギはベテランを含めたバランスです。若手だけのチームではなく、バスケに取り組む姿勢が手本になる選手だったり、成功を経験している選手がいることが大事です。あとはコーチ陣のスキルやワークアウトの環境ですね。その中で若手が成長していく。その仕組みがしっかりできているからこそ、これから若い選手を取ってくるところで有利に働くというのもあります。

また編成の話をすると、どうしても新加入選手のことばかり話してしまいますが、昨シーズンから在籍する選手のステップアップも当然あるはずです。生原(秀将)選手も特別指定選手だった昨シーズンは試合勘の面など難しかったと思うのですが、今シーズンはまた違うはずなので期待しています。

──大変な夏になりましたが、編成として最終的には「新シーズンも栃木は面白そうだ」と思えるチームだと言えそうですね。

やろうとしていることは明確だし、それを理解して体現してくれるメンバーが集まったと思っています。試合の場面場面で言えば個人の能力に救われるかもしれませんが、試合自体にはチームの結束力で勝ちにいきます。そこにブレがない前提で、長谷川さんにヘッドコーチとして来ていただいて、今までのチームを継承しながら新しいエッセンスを入れて、次のステージを目指すための新しいブレックスを作っていく。当然、Bリーグ連覇を目標にやっていきますので、新シーズンもブレックスを応援してください。