文・写真=鈴木栄一

「ゴール下で相手に好きにやらせないことが鍵でした」

7月30日、日本代表は2日連続となるウルグアイ代表と国際強化試合を実施した。出だしで引き離れた前日と違い、第2戦では第1クォーターを互角の展開で終えると、徐々に突き放して72-57と快勝し、フリオ・ラマス新ヘッドコーチの下での初勝利を挙げた。

日本の大きな勝因となったのは最後まで崩れなかったディフェンスだった。昨日は第1クォーターでいきなり25失点を献上したが、この日はすべてのクォーターを17失点以下に抑えた。この堅守に貢献したのがセンターの太田敦也だ。先発起用された太田は、持ち味である身体を張った粘りのディフェンスでゴール下を守り、日本代表に良いリズムをもたらした。

太田は勝因について次のように分析する。「昨日はこちらが良いシュートを決めても、すぐにインサイドの簡単なシュートを決められていました。今日は守備になったらすぐに戻って、まずはしっかり相手の速攻を止め、セットオフェンスをさせよう。ゴール下で相手に好きにやらせないことが鍵でした。それができたので、今日はこれだけ差がつき、相手に点を取らせなかったと思います」

そして「相手のインサイドは強いですが、あれが世界のスタンダードです。これを平気で止められるようにセンター陣はならないといけないですし、もっと慣れていかないといけない」とゴール下の番人としての強い決意を述べる。

ハッスルプレーの背中でチームを引っ張っていく

ラマス新体制となって初の12名は、東アジア選手権と比べると一つの大きな変化があった。東アジアのメンバーから竹内譲次、永吉佑也とビッグマン2人が外れたが、一方で新たなビッグマンの補充はなし。今回、ゴール下を主戦場とする選手は太田、竹内公輔、アイラ・ブラウン、張本天傑の4名のみであり、それだけに彼らへの指揮官が寄せる期待は小さくないはずだ。

また、太田と言えば、これまで代表の序列では同じ学年である竹内公輔、譲次の後ろという状況が長らく続いていた。しかし、今回のアジアカップに挑むメンバーに譲次はいない。そして公輔と比較しても、今回の2試合においては太田の方が同等、もしくはそれ以上にここ一番で起用されていた印象を受ける。太田にとっては、今、竹内ツインズ越えの絶好のチャンスと言える状況なのだ。

ただ、本人にそういった意識は全くない。「誰かより自分が長く出ているとか、考えたことはないです。自分の仕事が必要だと思って出してもらっているので、出された時はそれを必ずやるだけ。自分の存在感が高まっているという自覚はないです。ただ、自分の仕事が求められているという自覚はあります」

しかし、一方で太田が強く意識していることもある。それは責任であり、持ち味のハッスルプレーによって、背中でチームを引っ張っていくことだ。

「センターの人数が少なくて、正直びっくりしました。ただその分、自分が選ばれたことへの責任の重さを感じています。他の選手との代表争いとか競争についてはどうこう思っていないですが、責任は感じています。それを楽しめるような心構えを持とうとしています」

「やっぱり身体を張ることが必要です。ほぼ最年長ですけど、その中でハッスルして全力を出すことを、試合でも練習でも自分が率先して見せることが自分の役割だと思います」

サイズの不利に負けず踏ん張る秘訣は「気持ちで負けない」

アジアカップでのライバルたちを含め日本より世界ランキングで上位の相手は、日本よりサイズで上回っているケースが大半となる。この高さの不利に負けずに、どれだけゴール下の守備で踏ん張れるかが、勝利の大きな要因となってくることは間違いない。

「相手のビッグマンに対して、好きな位置でボールをもらわせない。常にコンタクトしていくことを意識したいです。これをしつこく40分やられれば、僕も嫌になります。それを継続することが大事です。そして気持ちで負けない。自分から引いてしまってはダメです」

このように、太田はアジアカップに向けて意気込みを語ってくれた。振り返ればBリーグ誕生前、太田は外国籍選手のオン・ザ・コートが2人、3人といったbjリーグでプレーし、リーグ戦から日常的に外国籍ビッグマンとずっと対峙していた。これは他の代表において、他のビッグマンにはない彼ならではの貴重な経験であり財産だ。

これまでの竹内兄弟に次ぐ第3の存在から脱却できるか。本人は全く意識していないというが、アジアカップは太田にとって存在感を大きく高められる絶好のチャンスだ。