ニコラ・ヨキッチ

スペインとの決戦に敗れたことで、厳しい組み合わせに

セルビアは2次リーグの最終戦でスペインに69-81で敗れた。ともに全勝で迎えた一戦、グループ1位通過ができれば決勝トーナメントではアメリカのいない山に入ることができるが、それ以上に同じヨーロッパの強豪同士、負けられない気持ちがぶつかる試合となった。

ところが、試合は思わぬ形で壊れてしまう。ニコラ・ヨキッチの退場劇がセルビアを圧倒的な不利に追いやったのだ。後半開始早々、自らの不用意なハンドリングミスでボールを奪われると、咄嗟に相手選手をつかんでしまいアンスポーツマンライクファウルを宣告される。この時点で、ヨキッチの闘争心はジャッジに向いてしまった。その2分後、自らがポストアップを仕掛ける場面でスペインにダブルチームで激しく当たられてボールを失うと、接触があったのにファウルがコールされないと激怒。これでテクニカルファウルが宣告され、退場となってしまった。

この時点で39-51と2桁のビハインドを背負っていたが、まだ時間は十分に残っていた。ヨキッチが退場した後はボグダン・ボグダノビッチ奮起してオフェンスを牽引している。それでもゴール下の要であり、ビッグマンでありながら攻撃の組み立てもできるヨキッチの退場を挽回するのは難しかった。試合巧者スペインに勢いをうまくかわされ、反撃も及ばなかった。

セルビアのヘッドコーチ、アレクサンダル・ジョルジェビッチは「選手の愚かな反応は好きではない。たとえ相手チームのほうが優れていたとしても、彼は最後まで戦わなければいけないし、チームリーダーであるべきだった」と、ヨキッチの愚行に厳しい言葉を投げかける。それと同時に「この件はロッカールームで終わりにした。我々は彼を必要としている。ウチは誰一人として欠いてしまっては戦えないんだ」と、引きずるような問題ではないことも強調した。

「選手はキャリアの続く限り成長していくもの。どこかここまで、という話ではなく、現役生活の最後の一日まで成長していかなければいけない。ヨキッチにとっては今が成長すべき時だ。自分がプレーしている舞台がどんなものなのか理解しなければ。ただ、彼はすごいヤツだから、きっと分かってくれる」

そして、指揮官はこう付け加えてもいる。「そもそも私は彼のプレーが好きだから、ずっとコートにいてもらいたいんだよ」

スペインに敗れたことで、セルビアはベスト8には進んだものの準々決勝でアルゼンチンと当たり、勝っても準決勝ではアメリカと当たることになる。東京オリンピックへの出場権を自力でつかみ取るには、この難敵をいずれも撃破する必要がある。それを果たすにはセルビアが心身ともに万全であることが前提となるし、ヨキッチがここでもう一つステップアップすることも必要だ。災い転じて福となすか。ジョルジェビッチヘッドコーチは、ヨキッチの奮起に期待している。