「この感覚を絶やさずに、来年のオリンピックまで」
バスケワールドカップ、日本代表は順位決定戦でモンテネグロに65-80で敗れた。
「ゴール下のコンタクトのところや、フィジカルの部分で最初からガツガツ当たられていたのが、ボディーブローのように最後には効いてきました。ちゃんと40分間を通してハードに戦えなかった部分で、最後に離されました」。敗因をそう語るのは馬場雄大だ。11得点5アシスト2リバウンドと結果を出したが、未勝利で大会を終えたことに忸怩たる思いがある。
これで日本は大会を5戦全敗で終えることになった。その中でも馬場はアメリカ戦で18得点を挙げるなど平均9.2得点をマーク。これは10試合に出場したアジア予選での平均8.4得点を上回る数字であり、自身の存在を少なからず世界に示すことはできた。
しかし本人にとっては「不完全燃焼ですね、やっぱり」と苦い思いしかない。「雰囲気なのか分からないですけど、いつもより疲れてしまう自分もどこかにいて、気持ち良くプレーもできなかったです。気力でリングにアタックしていきましたけど、それも5試合を通してできたことでもなかったです」
1次リーグ突破を目標に掲げて大会に臨んだが、1勝も挙げられなかったどころか、接戦にすら持ち込めなかった現実を受け、世界との差を「今のところ、正直すべてとしか言いようがなくて。勝っていたところは一つもないと思っています。本当に現実を見せつけられた感じです」と馬場は言う。
まさに課題ばかりのワールドカップとなったが、それでも実際に世界の難敵たちと親善試合ではなく100%の真剣勝負で対戦したからこそ得られた収穫はある。「本当に、やっている者しか分からないと思いますが、一瞬一瞬の判断だったり、相手の駆け引きといったところは初めてと言っていいほど経験したレベルの高さでした。この感覚を絶やさずに来年のオリンピックまでやる必要があります」
「マジでやってやるぞっていう気持ちで次に向かう」
もちろん自分たちが強いと過信するわけではないし、世界の壁が高いことは理解している。しかし馬場は大会前の取材で「相手は世界の強豪ですが、格上とか、勝てたらジャイアントキリング云々といった考えはありません。相手がどうこうではなく、自分たちの出来次第で結果は大きく変わると思っています」と自信を語っていた。
それでも、現実は圧倒的な力の差の前にやるべきことを全くさせてもらえず。「鼻をへし折られた感じはありますか?」とのこちらの問いに、馬場は「そうですね」と素直に語る。
ただ、ここからが馬場の馬場らしいところだ。「でも僕はネガティブではないので、へし折られたんですけど、這い上がるだけです。マジでやってやるぞっていう気持ちで今は次に向かって進むだけです」
馬場は早くも、この雪辱を東京オリンピックで晴らすために、自分が何をすべきかにフォーカスしている。本人が語るように課題はたくさんあるだろうが、ゴール下への強烈なドライブに加えて、どんな相手、どんな逆境になっても前を向いて攻めの姿勢で入れるメンタルの強さでも、このワールドカップで馬場は世界標準のポテンシャルを持っていることを証明した。
「今ここが底辺で、あとは上がるだけ」。そう言い切る馬場の逆襲への歩みは始まっている。