渡邊雄太

「背中で日本代表を引っ張って行こうと思いました」

バスケ日本代表は最終戦のモンテネグロに敗れ、5戦全敗でワールドカップを終えた。

1次リーグを終えた時点でエースの八村塁がコンディションの問題でチームを離れ、キャプテンの篠山竜青もケガでプレーができなくなった。渡邊は篠山と2人で担っていたキャプテンの役割を引き受けるとともに、エースの重責も自ら引き受けた。ニュージーランド戦でも結果が出ず、最後のモンテネグロ戦。渡邊は強い覚悟でこの試合に臨んでいた。

「精神的にも塁と竜青さんが抜けたのはかなり来ていて、年齢で言っても自分はまだ若い方ですし、もともと声を張り上げて竜青さんみたいに引っ張るキャラではありません。だから自分なりにプレーで態度を示そうと思ってニュージーランド戦に入ったんですけど、何もできずに終わってしまった。このままではとにかく後悔だけが残ると思ったので今日は自分のできるすべてをとにかく出し切ろうと思って、背中で日本代表を引っ張って行こうと思いました」

「最終戦なので遅いというか、もっと早くやれよってなるかもしれないですけど、とにかく自分の持っている100%の力を出し切ろうと思った結果がスタッツにも残ったので、チームを勝たせたかったという気持ちは強いです」

「ニュージーランド戦が終わった後に、正直もう自分自身が日本代表のユニフォームを着る資格がないプレーをしたと感じましたし、チームとしても代表として相応しくないプレーをやってしまっていたので、ああいうプレーだけは絶対に許されない」

強い気持ちはプレーに表れた。序盤から積極的なアタックを続けた結果、ゲームハイとなる34得点を挙げて一矢報いた。

渡邊雄太

「プレッシャーにどう打ち勝っていくのかを学べた」

それでも、日本はチーム力の差を見せつけられ65-80で敗れた。渡邊はダンクに行った際に指を痛めている。出血があって一度ベンチで治療を受けたとのことだが、渡邊が力強いプレーで引っ張っていたチームは、そこで勢いを失ってしまった。

「正直、チーム力以前に個人の力が海外の選手に比べて劣っていると思うし、気持ちの持ち方一つでも向こうの方がハングリーにプレーをしていた」と、渡邊は敗因を語る。自分のすべての力を出したにもかかわらず勝てない、世界との距離をあらためて実感させられる敗戦だった。

ワールドカップは全敗で幕を閉じたが、東京オリンピックまでの時間は限られており、落ち込んでいる暇などない。「この悔しさを絶対に忘れずに、まず個人としてレベルアップすることがオリンピックに向けて必要なことかと思います」と、渡邊は言う。

責任感の強い渡邊は予選ラウンドを突破しなくてはいけないと自分自身にプレッシャーをかけていたという。だがその結果「そのプレッシャーにやられて自分を見失い、自分を出せない状態になっていた」と、明かした。「プレッシャーにどう打ち勝っていくのかを学べたし、精神的な自分の弱さもあらためて感じられたのが収穫です」

「この経験を糧にしなければいけない」。この類いの言葉は敗れるたびに何度も聞かれてきた。渡邊はこの言葉通り、学びを生かして一つの結果を出した。NBAでの挑戦が待ち受けるため、当分代表活動には参加できないと予想される。それでも、こうした成功体験を繰り返し、精神的にも肉体的にも一回り大きくなった渡邊と再会できることを願いたい。